『烏の緑羽』を読んでから、またしても考察妄想を書き出してみました。
※あくまで個人の感想です。
ここまでの考察
もしかしたら、ここまでの翠寛の苦難の人生は、紫苑の宮の逃亡のための前フリだったのかもしれません。
なんだかんだいって雪哉は出自と天賦の才に恵まれているので、本当の意味で庶民のことをわかってないですから。
一方で、さまざまな人生経験をつんだ翠寛ならば、紫苑の宮を成長するまで隠し通すことができたのでしょう。(外界に出たかどうかは謎ですが)
二人が正体を隠しながら偽の親子として旅をする姿は『精霊の守り人』のジグロとバルサを彷彿とさせます。
紫苑と澄生と葵についての考察
そして、各地を逃げていた紫苑の宮が「澄生」だとしたら、「いろいろなものを見ました。ほんとうにいろいろなものを」という「追憶」のセリフと合致するんですよね。
以前、双子なのは茜と葵ではなく、紫苑と葵ではないかと思いましたが、もしかしたら、最初から「葵」という娘はいないんじゃないのか、とも思うんです。
「葵(あおい)」という名は音では「青」を想像させますが、実際の色は紫です。
そして、葵は「太陽に向かって咲く花」です。太陽を表す金鳥との関連を示しているように感じます。花言葉も「大望、野心、高貴」など、紫苑の宮を連想させます。
奈月彦が浜木綿の子供時代の戸籍「墨丸」を利用したように、あらかじめ仮の戸籍を用意しておき、お忍びや暗殺回避用に使うつもりだったのかもしれません。
あるいは、双子として生まれた葵は幼くして亡くなり、その戸籍を紫苑のために利用した、とか。
『追憶』で雪斎が「澄尾さんには若い頃に借りがある」と言ってますので、これが「借り」と考えるなら、亡くした子を冒涜するような行為に真穂さんが雪哉をよく思わない理由にもなります。
鮎汲郷の謎
今回も登場した地名・東領鮎汲郷。事件現場や登場人物の出身を除いて、これほどなんども登場する地名は、他にないような気がします。
- 雪斎の右腕である治馬の故郷
- 忍熊が祐筆として左遷された場所(『まつばちりて』)
- 翠寛が隠遁していた場所
鮎汲郷は単に、左遷組を受け入れてきただけなのか、それとも…。
これについては、阿部先生がトークイベントで答えてくださいました。答えはここには書けませんが、まあ今後も登場する地名にはなりそうです。
八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…人材育成、和製ハリー・ポッター(魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内版・北斎の娘と花魁の世界
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
烏に単は似合わない
- 『烏に単は似合わない1』…圧巻の描写と詳細な設定で描かれる八咫烏ワールドの始まり
- 『烏に単は似合わない2』…姫たちの陰謀と思惑が交錯する中、ある事件が起こる
- 『烏に単は似合わない3』…桜花宮で起こった連続殺人。さらに姫の一人が心を病んでしまう
- 『烏に単は似合わない4』…陰謀と殺人の真相。その真犯人は意外な人物だった
烏は主を選ばない
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンBOOK』…『空棺の烏』のキャラデザインや駆け落ちしたあのカップルのその後など裏話がたくさん
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい