阿部智里さんの『空棺の烏』読了。今回もまた、面白くて一気読み。今までと違って、謎解きよりも学生生活に重きが置かれています。
いや、意外なところに謎解きはあったのですが。
でも、この本での主人公・雪哉が体験する勁草院での学生生活と、そこで出会う友人たちとの友情こそが、この本の読みどころだと私は思います。
『空棺の烏』あらすじ
前回、八咫烏の世界「山内」に、外敵・猿が結界を破って八咫烏を襲う事件が発生。
山内の危機を救う「真の金烏」である若宮・奈月彦を守るため、彼に忠誠を誓った雪哉は「山内衆」の養成学校、勁草院へ入学する。
同じ学年には平民出身の茂丸、西領本家の貴族・明留(真穂の薄の弟)、ワケありな南領出身・千早など、個性的なメンバーが集まっていた。
厳しい課題に向き合いつつ、彼らとの間に友情が生まれるが、勁草院では若宮派と兄・長束派に分かれての対立がエスカレートしていき…。
八咫烏版ホグワーツ
金烏の一族を守る優れた武官を養成するために作られた勁草院。その授業はとにかくハード。
格闘や剣術などの他、法律や医術といった座学、「馬」と呼ばれる鳥形の八咫烏を乗りこなす御法、戦術シュミレーションを行う兵学など、多岐にわたります。
進級試験に合格しなければ、身分にかかわりなく退学という実力社会です。
そんな中でもご飯を食べたり、語り合ったり、時には喧嘩したり。ハリー・ポッターの魔法学校、ホグワーツを思い出しました。
最初は貴族の明留と平民(雪哉は郷長の息子だけれど平民寄り)の生徒たちとの軋轢があったりするのですが、それを乗り越えて行くところが胸熱で。青春ていいな♪
こうした学生時代に培った友は、これから命がけの任務につく彼らにとって、貴重な財産となるのでしょうね。
こちらの『阿部智里「八咫烏シリーズ」ファンBOOK』には、まだ漫画化されていない茂さん、千早、明留たちののキャラデザインも。
空棺の烏とは
雪哉たちの学生生活と平行して、新たな問題も描かれます。
若宮が先代の「真の金烏」の記憶を持たないことが原因で、神官が若宮の即位に「待った」をかけたため、若宮は先代の金烏の情報を調べることに。
そこで、意外なことが判明してゆくのですが…。
タイトルにもなった「空棺の烏」とは、行方不明になった先代の金烏のこと。
彼の行動にどんな意味があるのか、そして八咫烏を襲う猿との対決も間近にせまり、次回の話が待ち遠しいです。
再読感想
第二部『烏の緑羽』の内容が『空棺の烏』とリンクしていたため再読。
最初の頃はホグワーツのような学園生活と、雪哉が敵対勢力をバッタバッタと薙ぎ払う様子が痛快でした。
でも『烏の緑羽』を読むと、敵対勢力にも過去に様々なことがあってここに至ったのだということがわかり、物語の深みを感じました。
特に、教官の翠寛。彼はスネイプ教授のように意地悪でしたが、彼には彼の正義があったわけなんです。物語は視点が変わるとこんなにも違うのかと驚かされます。
外伝『ふゆのことら』やコミカライズでは道化役の市柳パイセンも、案外面倒見がよく、いいやつだったなあと。
ただまあ、ファッションセンスはアレですが…。
八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…和製ハリー・ポッター(ただし魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内版・北斎の娘と花魁の世界
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
烏に単は似合わない
- 『烏に単は似合わない1』…圧巻の描写と詳細な設定で描かれる八咫烏ワールドの始まり
- 『烏に単は似合わない2』…姫たちの陰謀と思惑が交錯する中、ある事件が起こる
- 『烏に単は似合わない3』…桜花宮で起こった連続殺人。さらに姫の一人が心を病んでしまう
- 『烏に単は似合わない4』…陰謀と殺人の真相。その真犯人は意外な人物だった
烏は主を選ばない
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンBOOK』…『空棺の烏』のキャラデザインや駆け落ちしたあのカップルのその後など裏話がたくさん
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩
- 阿部智里「八咫烏シリーズ」&名司生特別展2025…八咫烏シリーズと名司生さんオリジナルのイラスト展示
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい
