『亡霊の烏』阿部智里

亡霊の烏 ファンタジー
亡霊の烏

亡霊の烏』は、『楽園の烏』後の異世界・山内で起こる苛烈な権力闘争が描かれます。そして、今回も地獄の様相を呈していきます。

余韻に任せて書いたため、長文ネタバレご容赦ください。

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『亡霊の烏』あらすじ

『楽園の烏』で博陸侯に敗れた地下街の長・トビは、北家朝宅の預かりとなる。そこには博陸侯の母、梓と、風巻郷長の妻・忍が「人質」として暮らしていた。

トビは今後のことを考え、貴族の考えを学ぶことにする。

一方、金烏代の凪彦と皇后の蛍は、兄である長束と協力し、博陸侯を追い詰める策を講じる。うまくいったかと思われた矢先、思わぬ反撃と悲劇が彼らを襲う。

『望月』その後

地下街の長・トビは登場するものの、『楽園の烏』というより『望月の烏』の数年後の紫苑派VS博陸侯の抗争を中心に描かれます。

なので「楽園」のはじめちゃんも朔王も頼斗もでてきません。(山神も)「望月」の内容の補完的な展開で、なぜ女性たちが反旗を翻したのか。澄生の出生の秘密も明らかにされます。

しかし、後半には恐ろしい出来事起こるので、みなさまどうかお気をつけて…。

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女性たちの奮闘

家の道具としての立場の撤回や、自分の土地を守るために女性たちも奮闘します。

蛍と撫子

南家の姫である蛍と撫子。ふたりとも、道具として価値がなくなったら捨てられる現状を憂いて、協力し貴族社会の現状を変えようとします。

ようやく山内にもパラダイム・シフトが起こりそう。だったのですが…。

撫子さんはすべて終わったら長束さまと茶飲み友達になって囲碁でも打って幸せになってほしい。

梓さんと忍さん

風巻郷長の妻で、市柳パイセンの母である忍さん。今回のヒロインは彼女ですよきっと。彼女のたくましくも強引な態度に、反抗的だったトビも徐々に心を許していきます。

忍さんは外伝『ふゆのことら』にも登場する肝っ玉かあさんです。

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一方、梓さんは山内でも有数の人格者です(作者談)。確かにこれまで、彼女の言動で物事がうまく収まったこともありました。

しかし、末期の山内には、そんな慈愛は通用しなくなっているようです。

トビも忍さんには懐くものの、梓さんの言葉に苛立つこともありましたしね。

ここからネタバレです

ネタバレとともに、今後の展開に関する考察など随時更新していく予定。

一見、関連のないように見える話でも、伏線となって色々繋がってきそうですね。書影の裏はトビと雪則かな?女性は梓さんか花枝さんでしょうか?

竹模様の衣を持っています。竹には吉祥の意味のほか、竹の花は不吉とされているので、それをあらわしているのかも…。

凪彦の今後

紫苑の薫陶によって君主として成長した凪彦ですが、やはり坊っちゃん育ちのため、一度失敗すると挫折しがち。

まあでも、彼が逆転できるとしたら、鶴が音と山吹を味方につけることでしょうね。あとは羽母である双葉に協力を仰ぐとか。双葉はあせびを蛇蝎のごとく嫌っているので協力してくれそう。

第三の門?

物語冒頭で門のありかっぽいところが浮上。そうか、別に第三の門て谷間限定でなくてもいいんだよな。谷間と明鏡院は地理的にも近いし。そもそも「谷間にある」っていうのも噂レベルだし。

あるいは、紫苑自身が真の金烏であるなら、場所はどこでもいいのかも。羽衣を着ていなかったのは見張りに貴族の姫だと思い込ませるため?

紫苑の変節

路近は「人が最も残酷になるのは、自分が被害者だと思い込んだとき」と語っています。これは、紫苑のことなのでしょうか?それとも、谷間の逆襲を指すのか。

そもそも、紫苑の宮の理想は、庶民には届きづらいんですよね。博陸侯に逆らわなければ餌と寝床はもらえるし。だから民の間でも意見が揺れる。

そして、最後の紫苑の変節ぶりは恐ろしかった。紫苑、あんたそれじゃあ博陸侯とやっていること同じだよ…。

治真の敦房化

治真はもともと博陸侯に心酔するヤバい奴ですが、ますます敦房化が進行しています。自分が道具として捨てられるなら本望、と言い放つ治真。

私は雪哉を政権トップにつかせるという野望から、奈月彦暗殺にも治真が絡んでいると考察してるので、今後、彼がどんな風に暴走するか楽しみです。

敦房に関してはこちら『烏は主を選ばない』

最も恐ろしいセリフ

さて、地獄だらけの「亡霊」ですが、その中でも極めつけに怖かったのがこれ。大紫の御前ことあせびちゃん様のセリフです。

「ところで、竜笛は直ったの?」

ですって。これは昔、あせびの母・浮雲が放った、

「あなた、だあれ?」

に共通する無自覚さを感じます。

彼女は自分の周りしか見えてないし、後宮も息子も、自分のおもちゃのような感覚なのでしょう。

私は、彼女こそが報復されるべきだと思う。だって、彼女のことは細胞レベルで嫌いだから。

歴史は愚者によって作られる

物語の後半、紫苑派をやりこめたかに見えた雪哉ですが、恐ろしい出来事が起こります。『追憶の烏』と同じく、歴史は愚者の愚行で作られていくのでしょう。

私は以前、「雪哉の原動力である家族が殺されたら、この人どうなっちゃうんだろうな…」と考えたことがあります。

でも、まさかそれが、現実のものとなるなんて。愚行を犯した残党たちは、自分たちの信じたい、歪んだ真実を正当化して、雪哉の家族を襲いました。

ほら、ものすごい悲劇に遭遇すると現実味がなくなるっていうじゃないですか。今回の件はあれと同じなんですよ。あまりにも芝居がかっていて、どこか現実味がないんです。

梓さんがトビに語ったセリフがそのまま現実化してしまうフラグ…!しかし北本家、警備手薄すぎるだろ。

そして今後、雪哉は「何を」守ろうというのでしょうか。長束の言うように、民のいない、箱庭としての山内なのでしょうか…。

未解決の謎

これだけの謎がまだ未解決。あと一巻でどこまで回収できるのか。あるいは紫苑VS博陸侯が延々描かれるのか…。

  • 山神の様子と山内の崩壊…弥栄から20年、どこまでもつのか
  • 真の金烏の神としての名前…本当に失われてしまったのか?
  • 雪斎の山神対策…谷間の子どもを人間化するものの、逃亡者も出てきてどうなる?
  • 安原はじめと頼斗…こいつらは外界で普段通りにしてそう。頼斗は店番で夜職のお姉さんに人気出そう。でも早く帰ってきてケンカを止めてくれ…
  • 浜木綿の行方…「両親を殺された」の意味は肉体的な意味か、社会的な意味か
  • 第三の門て結局あるの?
  • ところで小梅ってどうなった?…工作員早蕨のブラフ?

八咫烏シリーズ感想

未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。

第一部

第二部

外伝

幕間(外界視点からの山内)

松崎夏未さんによるコミカライズ

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