『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』阿部 智里

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八咫烏シリーズの短編集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』これまで電子書籍のみの発売であった短編が、新たに書下ろし2話を含む外伝集として発表されました。

電子書籍で発売された4話は以下の通り。

著:阿部 智里
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『すみのさくら』

浜木綿の小さい頃のお話。南家の姫として両親の愛情を一心に受け、何不自由なく育った浜木綿。

しかし、ある日を境に両親の失脚から宮烏の身分を剥奪され、寺に預けられることに。

最初は境遇を受け入れられず脱走し、復讐を考える浜木綿だったが、失意の中すごすうち、寺に若宮がやってきて…

『すみのさくら』

『しのぶひと』

若宮の正室・浜木綿の侍女となった真赭の薄。あるとき真赭の薄と雪哉の間に縁談がもちあがる。

突然の話に驚き憤る真赭の薄だったが、その縁談を若宮夫婦に勧めたのが澄尾だと知り憤る。

『しのぶひと』

『ふゆきにおもう』

北領・垂氷郷の郷長の下の息子2人が行方知れずになった。母親の梓は必死で探すものの見つからない。

そんな時・息子雪哉とその生母・冬木の噂を耳にした梓は、北本家の姫・冬木のことを思い出す。

『ふゆきにおもう』感想

『まつばちりて』

娼家で生まれた「まつ」は女郎になる運命の少女だったが、金烏の正妃・大紫の御前に見出され「落女」松韻ととして出仕する。

朝廷には彼女に対抗する蔵人・忍熊がいた。忍熊からの驚くべき申し入れにより、松韻の運命は大きく変わっていくことに…。


この物語では、女を捨てて男として出仕する「落女」という設定が興味深いです。

中国宮廷の宦官と似ているようだけれど、あれは「男の機能」を捨てるだけなので、またちょっと違うかな。
女が男の仕事をする、というのはよしながふみさんの「大奥」シリーズに近いのかもしれません。

『まつばちりて』感想

書き下ろし『わらうひと』

『弥栄の烏』直後のお話。猿との決戦後、真赭の薄(ますほのすすき)のもとに澄尾が訪ねてくる。澄尾から正式に愛の告白を受けた真穂の薄はそれを断るものの、澄尾から返ってきたのは意外な答えで…。

ありゃ?真赭の薄は澄尾のこと好きじゃなかったのか。正直なところ、私はこの二人の話は「しのぶひと」まででよかったと思う。

二人の関係性を匂わせる程度にしておいた方が今後の展開に期待がもてたし、すべてを語ってしまっては興ざめという気も…。(『まつばちりて』ではあれほど描写を削ったのに)

ただ、言いたいことを言い合える澄尾と真赭の薄は、色恋は抜きにしてもいいコンビになってきていて読んでいて楽しい。

その他、『空棺の烏』に登場した雪哉の仲間・千早と結の兄妹喧嘩についても。こちらも女子が強いです。また、山内には外界から伝わった「外唄」という文化が存在することがわかります。

百年前の曲ということは、もしかしたら『ゴンドラの唄』なんじゃないかと。

歌詞に「命短し恋せよ乙女」と歌われる大正時代の流行歌。今でも時々引用されています。

書き下ろし『ゆきやのせみ』

『黄金の烏』直後のお話。忠誠を誓いはしたものの、相変わらず若宮に振り回されている雪哉。

雪哉は地方への視察の際、またフラフラとお忍びで出かけ、戻らない若宮を探しにいくと、ようやくみつけた若宮(と澄尾)は何故か牢の中だった…。

書き下ろし2編は精彩を欠くが、ほかの4編は上質

う~ん、正直書下ろしの2話は、他の4話に比べてクオリティが低い気がします。特に「ゆきやのせみ」は内容が薄いんですよね。

短編は短い文字数の中で「新しい設定」「登場人物の紹介」「物語の起承転結」を入れ込まなければならないから長編より技量が求められるとおもうのだけど、これまで本編の八咫烏シリーズの冴えが、書き下ろしではみられない。

『わらうひと』は真赭の薄と澄尾のキャラクターに助けられた部分が大きいし『ゆきやのせみ』なんてタイトルそのまんまの物語。

『ゆきやのせみ』は、正直、話に深みが無いなあ…と思ったら、この話って筋には関係ない「おまけま漫画」的な役割なんですよね。

おまけ漫画だったら楽しい内容だけれど、シリアスな内容の多い他の短編に混ぜるのはなあ…。

八咫烏シリーズ感想

未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。

第一部

第二部

外伝

幕間(外界視点からの山内)

松崎夏未さんによるコミカライズ

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