『亡霊の烏』を読んで説に思ったのが、「救いがほしい…」でした。なので、自分の心を救うためにも、少し楽観的な妄想をしたくなったんです。
だって、『追憶の烏』の奈月彦の暗殺以来の衝撃が起こるんですよ。雪哉のいちばん大切なものが殺されてしまうんですよ?
ちょっと救いのある妄想をしたってバチは当たらないですよね?
ここに書くのはすべて、わたくしの個人的な妄想です。公式とは一切関係ございません。そして、過分にシリーズのネタバレを含みます。ご了承の上、お読みいただければ幸いです。

紫苑と雪哉、こうであったらいいのにな
まず、『追憶の烏』のラスト付近で、雪哉は燃え盛る招陽宮に一人で入っています。そこで紫苑と「何か」があったのではないかと。
たとえば紫苑が「わたくしが戻るまで、山内をお願い」と言ったとする。雪哉はその約束を守って博陸候となったけれど、状況が善政を許さなくて。
だから雪哉は、『平家物語』の平教経のように「死出の供」として自分の「味方」である貴族連中を抱えて、地獄にいく覚悟なのかも、と私は思うんです。
味方を集めることは敵を集めること。これは、かつて長束が『烏は主を選ばない』で行った手法ですから。
雪哉はまっさらになった山内を紫苑に渡したいと考えているのかもしれない。でも、紫苑は自分だけがまっさらでいたくなくて、わざと博陸候を討ち滅ぼすような演説を行ったとか。
血みどろの山内は二人の純愛がもたらしたもの…と考えればまだ救いがある。かな…
紫苑に(貴族ともども)撃たれることが雪哉の愛であり、献身だったらいいな。それならまだ、家族というモチベーションを失った地獄にも、救いがある気がする。
最終的には処刑される博陸候、表情のない顔で見つめる紫苑。だけど一人になったとき、「雪さん…」と首を愛おしそうに抱きしめる姿が見たい。
そして、あせびは双葉にメッタ刺しにされてほしい。それくらいのことを奴はしてるので。まあおそらく死ぬ瞬間でも自分が殺される理由がわからないでしょうけれど。
どうする山内
紫苑(ときどき谷間)VS博陸候の戦いが佳境となってきましたが、山内そのものの滅びについてはどうなるんでしょうね。
そもそも、争っている場合じゃないんですよ。山神の代替わりがなくなったとしたら、これまでのようにはいかないんだから。
『弥栄の烏』で雪哉は「ましな滅び方」をしようと言及していましたが、その施策も反発にあったり、外界でも家出騒動があったりと、問題山積み。
でもって、『楽園の烏』でのはじめちゃん山売る売らない問題も残っています。
彼の条件は人との絆であり、それが山内にあるかもしれない。と言っているのですが、「亡霊」の時点では絆どころか争いが勃発。どうなる山内…。
紫苑の宮の今後
これまでの紫苑の宮の行動をまとめると
- 失脚後、翠寛と逃亡
- 葵(澄生)として山内を巡る→松高らと交流
- 外界を知る者たちと交流(千早とか)、あるいは外界に?
- 落女として宮中に出仕→谷間視察(幽霊としてトビに知恵を授ける?)
- 凪彦に知恵をさずける
- 俵之状を巻き込み野良絵騒動を起こす
- 滝壺にダイブ。死んだと見せかける
- はじめを山内に引き込む(?)
- 野良絵によるプロパガンダ
- 蜂起の演説
紫苑のやり方は正攻法だからこそ博陸候には通じにくいし、庶民には届きづらい。と思ったけれど、最終的に俵之状も協力したし、彼女は動きそうな人を見抜いて近づき、着実に成果はあげてきている気がします。
長束の捕縛も計算通りなのでしょう。彼を慕う人を蜂起に誘うには格好の事件ですからね。
そして最終的には紫苑が御祖(祖先の女山神)の名を取り戻して、新たな山内を作れば良いのではないかと。
やっかいな貴族連中を博陸候共々駆逐し、政治は凪彦をうまく導いてやらせれば、なんとか民の生活は守れるかもしれないし。
まあそれはそれで、永遠に生きるってのは地獄ですけれどね。
山内の癒しキャラ・市柳パイセン
山内の中で普通で、やんちゃで、愛おしいキャラ市柳。『亡霊の烏』にも登場し、母親である忍さんやトビを気遣います。
私は、市柳パイセンが普通に年を取って、孫たちに「小さい頃の博陸候は小生意気でなあ…」と縁側で昔話ができる山内になればハッピーエンドなんじゃないかと思っています。
その頃、博陸候が英雄として語られるのか、逆臣として語られるのか…。
遺書の謎
私はこれが引っかかっていて。ただ単に奈月彦視点の浜木綿なら大丈夫と「皇后に」全権を委任する意味だったのか。
あるいは、玉依姫のように「真の金烏の皇后」として、何かしらの力があるのか。それとも、開封者である娘・紫苑に向けてのメッセージなのか。
『亡霊の烏』で暗号がでてきたので、娘にだけわかる暗号を仕込ませていたとか…?
八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…人材育成、和製ハリー・ポッター(魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内の北斎父娘
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
- 『烏に単は似合わない』…四巻の一コマが特にヤバい
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンブック』…読めばだいたいのことはわかる
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩だった
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい