現在、私が最も推している作家が嶋津輝さんです。まだデビュー間もない作家さんですが、その実力はすさまじく、長編第一作『襷がけの二人』で直木賞候補に。
彼女の作品は、どこにでもいる人々の、ちょっと「普通じゃない」部分が出てきます。
その日常の切り取り方、描写がなんともリアルで、読みながら思わず「こんな人いるよなあ…」と思ってしまいます。
まだ作品数も少なく、書籍化されていない文章もあるため、現時点で読める嶋津輝作品を集めてみました。
アンソロジー
アンソロジーは、数人の作家がテーマに沿った小説を執筆する短編集。現在、嶋津輝さんは2つのアンソロジーに参加されています。
猫はわかっている
猫をモチーフにしたアンソロジー。こちらでは『猫とビデオテープ』というバブル時代のバイト仲間との友情をモチーフにした作品を発表しています。
他の作家さんの作品もよかったのですが、嶋津輝さんは、設定や登場人物たちの関係性、物語のオチが素晴らしくて、「この人の小説をもっと読みたい」と強く思ってしまったのです。

私たちの特別な一日
冠婚葬祭をテーマにしたアンソロジー。嶋津さんは『漂泊の道』というタイトルで葬儀の喪服をモチーフにした作品です。喪服の変遷から、ある女性の人生を描いています。

短編
現在、単行本『スナック墓場』と文庫化された『駐車場のねこ』が発売されています。
スナック墓場
閉店したスナックの同窓会を描いた『スナック墓場』のほか、倉庫作業員の女性の日常を描いた『ラインのふたり』など、人の幸福と不幸を細やかに描いた短編です。モチーフが毎回面白い。
駐車場のねこ
短編ではオール讀物新人賞を受賞した『姉いもうと』を収録した『スナック墓場』。後に文庫化され『駐車場のねこ』に改題。
普通の人々の、ちょっと普通じゃない部分を描いた作品です。読むとくすっと笑えて、ちょっと元気が出ます。
長編
初の長編となる『襷がけの二人』は大正から戦後まで、二人の女中の物語です。
途中で奥様と女中の身分が入れ替わる設定が面白いのと、昭和の暮らしを丁寧に描いているのが物語に入り込みやすかった。一気に読んでしまいました。
エッセイ
残念ながらまだ書籍化されていませんが、嶋津輝さんはエッセイも面白いのです。
友人から贈られた本の話や、車内で弁当を食べる女性の話など。日常をユニークに描いています。
ぜひとも単行本にしてほしい。
