八咫烏シリーズ外伝『ふゆきにおもう』。『烏は主を選ばない』の主人公・雪哉の出生にまつわる物語です。
『烏は主を選ばない』 から八咫烏シリーズの重要な役割を担ってきた雪哉。一見、飄々としているけれど、俯瞰的に物事をみる目と明晰な頭脳を持つ少年で、若君からの信頼も厚い。
そんな彼の能力は、実は二人の母親から受け継いだものでした。

『ふゆきにおもう』あらすじ
北領・垂氷郷の郷長の下の息子二人が行方知れずになった。母親の梓は必死で探すものの見つからない。
そんな時、雪哉と母親の噂を耳にした梓は、北本家の姫・冬木のことを思い出す。
梓は昔、冬木に仕えていた侍女だった。
冬木は病弱ゆえ、意地のわるいところがあったが、梓のように気に入ったものや、小さく無垢なものにはやさしかった。
そして、俯瞰的に物事を見る目と、明晰な頭脳を持っていた。
ある時、二人の前に垂氷郷の嫡男・雪正が現れた。健康的で誠実な雪正に惹かれた冬木をおもい、梓は雪正と冬木の縁談を申し出る。
しかし、雪正が思っていたのは梓の方で…
二人の母と雪哉(ネタバレあり)
『烏は主を選ばない』では、雪哉の母は侍女だった梓と夫・雪正へのあてつけとして、無理やりに雪哉を産み落として死んでいった、と語られました。
けれども、そこには冬木の計算があったのです。ただ純粋に自分の子を生みたい。
その思いと梓への信頼。自分が死んだあと梓が雪哉を守ってくれるだろうと。だから二人を恨む芝居を打って雪哉を産み落としたのでした。
このふゆきの計算高さと、自分の評価より目的を優先する行動力、それが雪哉に受け継がれたのでしょうね。
『しのぶひと』で雪哉が結婚相手の条件は「自分に何かあった時頼れる実家があり、夫婦間に恋愛感情を持ち込まないこと」。
こうした表現も若宮の影響もありますが、やはり冬木の遺伝なのでは。
そしてもう一人の母、梓からは思いやりと思いやりを受け継いだ気がします。
この母がのおかげで、雪哉は垂氷郷でなんとかやっていけたのだし、『黄金の烏』でも相手への思いやりについて教えられています。

八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…人材育成、和製ハリー・ポッター(魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内の北斎父娘
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
- 『烏に単は似合わない』…四巻の一コマが特にヤバい
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンブック』…読めばだいたいのことはわかる
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩だった
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい