2021年10月3日に行われた『追憶の烏』ネタバレトークイベント(追憶ネタバレ会)に参加しました。
以下はその感想です。こうして直接、作家さんや漫画家さんの話が聞けるのはうれしいですね。
※『追憶の烏』及び八咫烏シリーズのネタバレになっていますので、読了後にお読みいただければ幸いです。
『追憶の烏』表紙絵の意味
まずは、『追憶の烏』の表紙絵について。名司生さんが描く表紙絵の候補のイラスト、どれも美しい…!候補の中には焚書をイメージして端が焼け焦げたパターンや、若宮・姫宮と雪哉の対立を表したものなど。
どれもすばらしく、いつか「八咫烏展」などをやる際にはぜひ展示してほしいです。
あと、噂の裏表紙。水面に散らばる紫陽花の花びらと、横たわる奈月彦。
帯に隠れる絶妙な配置。『追憶の烏』も『白百合の章』も、描かれた花々にもひとつひとつ意味があるし、各キャラのイメージフラワーも決まっていたそうです。

鬼と呼ばれ喜ぶ作家、ファン代表として作家に詰め寄る漫画家
コミカライズ担当の松崎先生がもう、ファン代表として詰め寄るww「エグい…!」「鬼悪魔阿部智里」など、制作側にもかかわらず、ファン目線で突っ込んでくださるww
松崎先生、献本を読む勇気がなかったのに掃除中にうっかり見つけてしまい、読み終わったら心身ともにやられ、阿部先生に思わず電話。
これから『烏は主を選ばない』の漫画をどうやって描けば…と、松崎先生、毎日枕を涙で濡らしているそうで、それを満面の笑顔で見守る。鬼悪魔阿部智里…。
…さすが、あの、あせびちゃんさまの生みの親です。
恐ろしいほどの構成力
この鬼悪魔阿部智里先生、第一作『烏に単は似合わない』のころから、第二部の構想ができていたし、第二部の動き(あせびちゃんさまの再登場とか)もすでにできていたのだとか。
また、これから第二部にでてくるキャラの「親」としてつくられたキャラが一部の中にいるのだとか。(あれか…?)
そのほか、山内衆の礼とか、鳥形になったときに抜けやすい紐の結び方だとか、とにかく細部まで作り込まれています。
松崎先生「もし第一作が世に出なかったらどうなったの…?」
阿部先生「主でだめなら、見切りをつけていた」
松本清張賞に選んでくださった審査員の方々、その後のシリーズ化をきめた出版社の方々、本当にありがとうございます…!
登場人物について
奈月彦の死はだいぶ前から決まっていたので動かせず(老後のビジョンが見えなかったから)、明留については面談部屋で死を伝えた時潔かったとか。
「弥栄」で死んだ茂丸も同様で「家族と雪哉をお願いします。」と言ったそうな。それを聞いた松崎先生、思わず涙…。
※面談部屋…キャラの今後を決める阿部先生の脳内会議をこう呼ぶ。ただ、作者でも運命を動かせないこともあるし、プレゼンして運命が変わるキャラもあるらしい。
八咫烏シリーズは視点を変えると見方が変わる
阿部先生「『はるのとこやみ』にしても、隠れている部分があり、それが二重三重の意味をもちます。」
松崎先生「浮雲からしたら、ストーカー男の話ですもんね。」
そして、追憶のあのシーンでも意味深な言葉が。
阿部先生「これまでの描写は、奈月彦からみた浜木綿だから。」
松崎先生「ゆうて浜木綿も南家の女ですからね。」
おまけ
みんな大好き、市柳先輩の消息について。
阿部先生「正直どうでもいいと思ってるんで。」
松崎先生「市柳先輩は、雪哉だけじゃなく、あんたのおもちゃにもなってんのか…!」
阿部先生「じゃあ、元気にしてます♪」
思うに市柳先輩は山内の不要不急キャラなんだろうな。市柳先輩が出てくるってことは、山内が平和なのだと思います。
私のお気に入りはなんと言っても松崎先生による「あせびちゃんさま」のモノマネです(笑)
『追憶の烏』で幼い凪彦をつれて、会議の場面に乗り込んでくる時、鈍色の衣装に香色の髪がゆらめき、胸に手を当て小さく息を吐いて、これから私がしっかりしなくちゃ!
みたいな可憐な女性の仕草を再現されてました。
いやその人、山内で最も危険な猛獣ですけどね…。
その他にも、ますほさまは自分で幸せを掴み取るタイプだとか、頼斗くんはパリピでディズニーランドとかいっちゃうタイプでモデルとかもやってそうだとか、キャラの深堀り(?)も行われて楽しい会でした。
八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…人材育成、和製ハリー・ポッター(魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内版・北斎の娘と花魁の世界
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
烏に単は似合わない
- 『烏に単は似合わない1』…圧巻の描写と詳細な設定で描かれる八咫烏ワールドの始まり
- 『烏に単は似合わない2』…姫たちの陰謀と思惑が交錯する中、ある事件が起こる
- 『烏に単は似合わない3』…桜花宮で起こった連続殺人。さらに姫の一人が心を病んでしまう
- 『烏に単は似合わない4』…陰謀と殺人の真相。その真犯人は意外な人物だった
烏は主を選ばない
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンBOOK』…『空棺の烏』のキャラデザインや駆け落ちしたあのカップルのその後など裏話がたくさん
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい
ネタバレ込みのこれまでの考察
阿部智里作品
八咫烏シリーズ以外にも、いくつか作品を書かれています。
八咫烏シリーズ第一部(アニメ化されたもの)
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
松崎先生「何もかもがひどい…!」
阿部先生「まだたくさん生きているから大丈夫だよ♪」