人の姿をとる八咫烏の世界を描いた阿部智里先生の『八咫烏シリーズ』外伝『しのぶひと』。
若宮のお后候補だった美女・真赭の薄(ますほのすすき)に縁談がもちあがり…。

『しのぶひと』あらすじ
若宮・奈月彦を守るため、地方豪族の次男坊・雪哉は王の護衛である山内衆の養成学校、勁草院へ入学する。
端午の祭祀にみごとな弓射を披露した雪哉。若君の正妃・浜木綿の君に仕える女官・真赭の薄(ますほのすすき)は、そんな雪哉の成長を微笑ましく見つめていた。
しかし、出家している身(実際に尼になるわけではない)とはいえ、かつては若宮のお后候補となるほどの美貌の真赭の薄は、祭祀の際に貴族たちから見初められて縁談が舞い込んできた。
彼女の行く末を案じた若宮と浜木綿の君は、ある人物の助言から彼女の縁談の相手に雪哉を指名したのだが…。
ここからネタバレ感想
『玉依姫』に至る前のつかの間の平和な日々に、こんなことが起こっていたんですね。実は雪哉と真穂の薄の縁談を助言したのは若君の側近・澄尾でした。
そのことが後に真赭の薄にバレてこっぴどく嫌われるのですが…。
澄尾、不器用だなあ…。
このあたりのストーリーが『弥栄の烏』へつながっていくわけですね。
そして澄尾の気持ちを唯一察したのが真赭の薄の弟、明留だったとは。おぼっちゃんと思っていたけれど、なかなかどうして、面倒見が良く人の気持ちを察することのできる子なのだな。
このあと、千早の妹にも世話を焼いているし。
結局、この縁談は真赭の薄が嫌がりお流れになりました。
でも、雪哉の妻に求める条件が「政治的な選択で裏切るかもしれない、夫婦間の恋愛感情は必要ない。」など、まるでどこかの主みたいな言い草なんですね。
まあ、彼なりに相手を思っての言葉ではあるのですが、この主従似たもの同士だわ…。
八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』は、『すみのさくら』から『まつばちりて』までの4編に描き下ろしの2編が加わった外伝集。

八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…人材育成、和製ハリー・ポッター(魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内の北斎父娘
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
- 『烏に単は似合わない』…四巻の一コマが特にヤバい
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンブック』…読めばだいたいのことはわかる
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩だった
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい