八咫烏シリーズ外伝『なつのゆうばえ』読了。
八咫烏の帝「金鳥代」の皇后である「大紫の御前」の物語です。山内の悪役である彼女の過去に何があったのか。

「なつのゆうばえ」あらすじ
小さい頃から「南本家の姫」として、誇りと振る舞いを叩き込まれてきた夕蜩(ゆうぜみ)。やがて「金鳥代」となる若宮に嫁ぎ、皇后となることを運命づけられていた。
しかし、夫となる若宮は愚鈍で彼女を嫌い、唯一彼女を愛してくれた両親もなくしてしまう。
生きる意味さえ失いかけた中で、彼女が見つけたのは…。
大紫の御前の意外な一面
この外伝が始まってからせひとも「大紫の御前」の物語がよみたいと思っていました。
なぜなら、八咫烏シリーズの「大紫の御前」といえば、主人公の若君と敵対するラスボス的な女性だから。そんな敵役の彼女を、別の角度から見たらどんな物語が潜んでいるのだろうか…と思っていたのです。
この外伝シリーズは、本編では描かれなかった登場人物のバックボーンや、心情、山内の生活や風俗を細やかに描いてくれるため、外伝を読んでからまた本編を読むことで、物語をより深く感じることができるんです。
彼女の行動原理は意外なところにあったのですね。誰も信用ができない、だれも愛せない世界で、彼女が手に入れた行動原理ははたから見ると歪んでみえるかもしれません。
でも、それこそがたったひとつ、彼女に残された「自由」だったのでしょう。
そんな複雑な人間模様と対をなすように、夏の庭、ゆうばえの描写がとても美しくて、匂いまでも感じられるようでした。

八咫烏シリーズ感想
未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。
第一部
- 『烏に単衣は似合わない』…ゆるふわ世間知らず美少女のシンデレラストーリー?
- Audible『烏に単衣は似合わない』…そりゃこんな声で笑顔で言われたら落ちますよ…
- 『烏は主を選ばない』…ひねくれ小僧と空気読まない若君のバディ誕生
- 『黄金の烏』…人(八咫烏)食い猿がやってきた…!
- 『空棺の烏』…人材育成、和製ハリー・ポッター(魔法なし)
- 『玉依姫』…なんで私が異世界に?
- 『弥栄の烏』…山神さま、ちょっと落ち着いてください…!
第二部
- 『楽園の烏』…地獄のここが楽園だ。ダース・ベイダー雪斎爆誕
- 『追憶の烏』…私はただ、お慰めしたかっただけなのです…!
- 『烏の緑羽』…バブみイケメン成長ゲー
- 『望月の烏』…私、博陸侯のお手伝いをしたいのです!
- 『亡霊の烏』…紫苑VS博陸侯。試合に勝って勝負に負けた博陸侯
外伝
- 『かりんみず』…美味しいかりんみずはいかがですか?藤波さま
- 『さわべりのきじん』…虫を生のまま食おうとすんじゃねえ
- 『きらをきそう』…山内の北斎父娘
- 『烏百花 蛍の章 八咫烏シリーズ外伝1』…雪哉がセミ食ったりとか
- 『烏百花 白百合の章 八咫烏シリーズ外伝2』…きんかんを煮たりしています
幕間(外界視点からの山内)
松崎夏未さんによるコミカライズ
- 『烏に単は似合わない』…四巻の一コマが特にヤバい
- 『烏は主を選ばない1』…絶妙なキャラクターと風景描写
- 『烏は主を選ばない2』…ムチャ振り、刺客の襲来、貧民街への出向
- 『烏は主を選ばない3』…圧巻の谷間描写
- 『烏は主を選ばない4』…「あれは下賤の者だ」の意味
- 『烏は主を選ばない5』…意外な裏切り者と意外な協力者
ファンブック・イベント
- 『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』…ファンブックの電子簡易版
- 『八咫烏シリーズファンブック』…読めばだいたいのことはわかる
- 『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想…鬼畜作家に精神を翻弄される漫画家
- 八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023…眼福だったし阿部先生ファンには菩薩だった
- 漫画版『烏は主を選ばない』3巻刊行記念スペースざっくり聞き書き…計算され尽くしたキャラ設定まじすごい