『コンビニ人間』村田沙耶香

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芥川賞受賞作『コンビニ人間』。普通が一番ふつうじゃないし、一番残酷。

著:村田 沙耶香
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『コンビニ人間』あらすじ

人の気持ちや感情を理解できない古倉恵子は、コンビニ店員として働くことが唯一社会との接点だった。マニュアル通りにやればいいコンビニ店員は、理想の職場だった。

彼女はコンビニで働き、コンビニのご飯をたべ、コンビニのために体調を整える。一方、新しく入った店員・白羽は仕事もせずに社会への不満ばかりを口にする男だ。

そんな白羽と恵子は、ひょんなことから一緒に暮らすことになった。恵子は「普通」の人間を装うために。白羽は(自分のだらしなさを棚に上げ)働きたくないために。

そんな奇妙な同居生活は、やがて恵子をコンビニ店員としての人生に支障をきたすようになり…。

いやこれ、周囲の人間の方がおかしいだろ

この本を読む前、ネットの書評や感想では「コンビニ店員としてしか社会との接点を持てない女性」「アスペルガー」「特異な人物」などと書かれていました。

よっぽど変わっている人の話なのかな?と思って読んだら、実は普通と言われている人の方がおかしいんですよ。

後に恵子さんと同居する白羽さんはストーカーで自己中でいつも他人を口撃している社会不適合者だし。友人の夫たちも「36歳でコンビニバイトっておかしいだろ」と面と向かって言ったりする。

恵子さんは感情を理解できないけれど、口調や服装は周囲の人間からトレースし、人間関係を構築しようとしているのに。

見よう見まねですが、彼女はコンビニ店員であるために周囲とも関わろうと努力するんです。

そんな恵子さんは、『アルジャーノンに花束を』の主人公・チャーリーに少し似ている気がします。

チャーリーも現状に満足しながらも、普通を手に入れようとする。

それを、他の人間が無理やり「普通じゃない」とラベルををはりつける。

普通って怖い。本当に。

アメリカだったら違う話になりそう

でも恵子さん、コンビニ店員としてはかなり優秀なんです。マニュアル通りにきちんと作業をこなすし、なんなら他店の陳列を直しちゃったりもする。彼女は

もしこれがアメリカだったら、まったく違う話になりそう。

彼女の能力を活かして働ける場所を提供したり、いろいろな「普通じゃない」人たちを集めたコンビニが繁盛したり。

そんな『グレイテスト・ショーマン』のコンビニ版みたいなサクセスストーリーもありえそう。

Audible版の朗読は大久保佳代子さん

『コンビニ人間』はAudible版を視聴しました。最初は朗読があまりにも違和感があって、「これ、だれが朗読してるんだ??」と思ったら、大久保佳代子さんでした。

彼女の独特な朗読に、最初は違和感を感じながら聞いていたのですが…。なんだかその独特さが徐々にクセになるんです。

それはこの作品の主人公、コンビニ人間のイメージにも重なります。最初は拙さを感じたものの、白羽さんの卑屈さや恵子さんの淡々とした口調が表現され、気がつくと朗読に引き込まれていました。

こんなにも作品と朗読が合致したのは『板上に咲く』の渡辺えりさん、『墨のゆらめき』の櫻井孝宏さん以来です。

村田沙耶香作品と大久保佳代子さんの朗読が相性ぴったり。Audibleでもぜひ。

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