『おやつ』は、お菓子をテーマにした時代小説のアンソロジー。読むと和菓子が食べたくなってしまいました。
「夢の酒」(中島久枝)
おみちの父は餡を炊かせたら絶品の、腕のいい職人。しかし、父親はたまにしか仕事をしない。苦しい生活をなんとかしようと、母と二人であんこを使わないお菓子を考案するものの…。
父親がたまにしか菓子を作らないのには理由があり、おみちは両親の秘密を知ることになります。
落語『夢の酒』をモチーフにしたお話。おみちたちが作る、さつまいものお菓子が素朴で美味しそう。
「如月の恋桜」(知野みさき)
兄弟二人で営む菓子屋。ある日、弟の修行先だった菓子屋と菓子対決をすることになり…。
元遊女の三味線師匠や、食いしん坊の女中お七など、個性的なキャラクターが多い。
シリーズものらしいので、他の話も読んでみたい。
「養生なつめ」(篠 綾子)
元・武士の娘であるなつめは、両親を亡くし、歌人の了然尼に育てられる。行方不明の兄と再会し、思い出の菓子を食べるため、菓子屋に奉公するが、女のなつめは菓子作りをさせてもらえず…。
こちらもシリーズもの。文化人の了然尼や露寒軒などに薫陶を受けたなつめは菓子のネーミングセンスにも優れています。
彼女の過去はこの短編だけでは分かりづらいので、こちらも他の話を読む必要がありますね。
「お供えもの」(嶋津 輝)
手代が跡を継ぐことになり、自暴自棄になり家を飛び出した菓子屋の息子・善吉。ひょんなことから瀬戸物屋を手伝うことになる。
そこで彼は店主が急な病で妻を亡くしたことを知り、彼らのためにある菓子をつくる。
大好きな作家・嶋津輝さんの時代小説。果たして、時代小説作家のお歴々と比べてどうなのかな…。と、思ったら、素晴らしかったです。なんなら、他の作品よりも時代小説らしい。
細々としたものを買い揃えていく様子だとか、生活描写がとても細やかだし、人物描写も素晴らしくて、瀬戸物屋の店内が想像できます。
「大鶉」(西條奈加)
菓子屋を営む治兵衛は元武家。一族が集まる法事で久しぶりに実家を訪れると、子供の頃過ごした庭にはまだ、椎の木が残っていた。この木に昔、弟の五郎が登りそのまま降りてこなかった。
治兵衛は弟の好物である菓子・大鶉を下男とともに作ることに。
なにやら治兵衛には出生の秘密がありそう。菓子屋になったのも気になるし、シリーズを読みたくなりました。

