日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作である『僕僕先生』。
そんなことはつゆ知らず、可愛い表紙絵に魅かれて読んでみたら大当たり。
挿絵は畠中恵さんの「つくもがみ貸します」も担当された三木健次さん。
貧相な馬を引く青年と、かわいらしい少女が綺麗な色の雲に乗っている絵が描かれています。
僕僕先生 あらすじ
物語は唐の時代。都から遠く離れた光州に、王弁という若者がおりました。裕福な父親のおかげで働く事もせず、ただのんびりと日々を送っている。
ま、いまでいうニート青年です。
彼の父親は元県令。引退した今では不老長寿に憧れ、近隣の黄土山に住み着いた仙人と縁を結ぶため
王弁に供物を届けさせます。
黄土山にたどり着いた王弁を待っていたのは、仙人のイメージとはかけ離れた美少女。
彼女は「僕僕」と名乗り、自分が黄土山に住まう仙人だといいます。
やがて王弁は少女仙人・僕僕に従い、あこがれていた旅に出ることになります。しかし、僕僕先生のやることですから、王弁は様々なところへ連れて行かれてしまいます。
皇帝の宮殿から、伝説の神・帝江のいる世界まで旅をしていくのです。
僕僕先生、仙人なのに温泉ではしゃいだり、王弁をからかったりするおちゃめな部分と、困っている人を助けたいという使命感をあわせもつ、とても人間的な仙人です。
そんなかわいい僕僕先生に、当然王弁はメロメロ。
彼女と少しでも彼女と一緒にいたいと思うのですが、生来の怠け者精神がなかなか抜けず、ただ僕僕先生について旅を続けてゆきます。
神仙と人
『僕僕先生』は怠け者青年の成長物語と同時に、神仙と人間との関係の変化が描かれています。人が紙に頼らずに問題を解決しようとする時代の過渡期なんですね。
そのため、仙人たちは人間との距離をとろうとし、人間は、人を惑わす仙人たちを排除しようとします。
そんな中、僕僕先生と王弁は波に流されるでもなく、逆らうわけでもなく、彼ら自身で進むべき道を決めてゆきます。
これからのふたりにはどんな冒険が待っているのでしょう。