みなさんはお気に入りの音楽をどうやって見つけますか?
サブスクやジャケ買いなど、方法はたくさんありますが、私は本の中からお気に入りの音楽を見つけるのが好きです。
文章のプロが描く音楽描写は巧みですし、聞いたときの感動が文章を通じて伝わってくるのです。特に好きな作家が好きな曲は、ものすごく聞いてみたくなります。
カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲 (金城一紀『GO』)
金城一紀さんは小説や脚本の中で印象的な音楽を紹介しています。在日コリアンの少年、杉原の青春を描いた『GO』。
作中、主人公の杉原と彼女の桜井は「カッコいいもの探し」として音楽やアート、本を勧め合う遊びをします。最終的にオペラを観に行くことになり、杉原が勧めたのが「カヴァレリア・ルスティカーナ」でした。
オペラの中で特に有名な曲がカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲。作者自身もこの曲が好きなようで、脚本を手掛けたドラマでも使われていました。
美しくてどこか悲しい曲です。
セザール・フランク ヴァイオリン・ソナタ(野呂邦暢『夕暮の緑の光』)
クラッシックでも結構マイナーな部類に入るセザール・フランク。おそらくこの本、野呂邦暢『夕暮の緑の光』を読んでいなかったら、一生出会わなかったでしょう。
野呂邦暢は向田邦子が惚れ込んでいた作家です。しかし、40代で早逝したため世間にはあまり知られていませんが、今でも一部の古書、小説ファンに愛されています。
そんな野呂邦暢が衝撃を受けた曲がセザール・フランクのヴァイオリン・ソナタです。
精密に組み立てられた分子構造の模型にそれは似ていた
衝立の向こう側
クラシックに造詣の深かった野呂邦暢。そんな彼が一度聞いただけで魅了されたというヴァイオリン・ソナタ。どんな曲か知りたくなり、さっそく聞いてみました。
別の引用で用いられた花がほころびるイメージにぴったりの美しい曲です。
薔薇の蕾がおもむろにほころびるような
リヴィエール
動画は服部百音さんの演奏。他にもヴァイオリニスト三浦文彰さんとピアニスト辻井伸行さんの演奏もとても美しいです。ぜひ聞いてみてください。
野呂邦暢と名曲喫茶
野呂邦暢が青春時代を過ごした昭和30年代。本を読んだり、音楽を聞いたり、部屋で夜遅くまで友人と話たりして過ごしています。
ネットもなく、知的好奇心を満たす情報の少ない時代です。けれども、野呂邦暢の青春の過ごし方には現代にない豊かさを感じるのです。
野呂邦暢はほかにも本や音楽にまつわるエッセイを数多く遺しています。