『光のとこにいてね』は、二人の女性の半生と愛を描いた物語。
本当に一穂ミチ作品は残酷だ。残酷で美しくて愛おしい。
鋭利な刃物でいつの間にか切られたような、その傷口は痛いのに、どこか甘い快楽をともなっていて、物語から抜けだせなくなるのです。

『光のとこにいてね』あらすじ
お嬢様育ちの結珠(ゆず)と団地育ちの果遠(かのん)は小学二年生。結珠は母親に連れてこられ、待たされていた団地で果遠と出会い、二人はつかの間の交流が生まれた。
孤独だった二人は、お互いの隙間を埋めるように心を通わせていく。しかし、結珠が突然、団地に来なくなってしまう。
八年後、高校に進学した結珠は美しく成長した果遠と再会するが、またしても二人は離れ離れに。やがて大人になった二人は意外な場所で再会し…。
残酷で美しい
とても残酷な物語だと、思ってしまいました。
最初は、二人が母親から種類の違うネグレクトを受けている場面が残酷に感じました。でも、読み進めていくうちと彼女たちもまた、残酷ではないかと感じるようになるんです。
体験を共有し、「自分を理解するのは相手だけでいい」と感じる二人の間には、夫も子どもも入れない。
そんな残酷さが、光や雨や虹、海などの美しい風景にのせて旋律のように紡がれていく物語でした。
苦手なのに惹きつけられる
私は一穂ミチ作品でなければ、こういうテーマの本は読まないと思う。
それはちょうど、結珠が美しくて成長した果遠に嫉妬を感じるように。そして、結珠と果遠が惹かれ合うように、読まずにはいられない。
改めて、一穂ミチの作品は残酷で美しくて、そして胸がかき乱される。苦手なのに、でも惹かれてしまうのです。
『ほろよい読書おかわり』でも、ベトナム人義母と娘の愛憎がジンの香りとともに描かれます。
