『国宝 下 花道篇』吉田修一

女形 小説感想

国宝 下 花道篇』、この作品をAudibleで聞き始めてから、魂を持っていかれました。いや、すさまじい物語でした。

Audibleを聞き終わったらもう、放心状態です。芸に取り憑かれた二人の役者の物語に完全に心を持っていかれました。

著:吉田 修一
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『国宝 下 花道篇』あらすじ

血筋に救われた俊介と、血筋に拒まれた喜久雄。俊介の復帰舞台に小野川万菊ら名優を当てられたことに嫉妬した喜久雄は、江戸歌舞伎の吾妻千五郎の娘・彰子を籠絡し後ろ盾を得ようとする。

一時期は新派に身を置き、芝居に専念する喜久雄だったが、マスコミの戦略により、隠し子の存在や自らの出自を暴かれ、窮地に陥る。

やがて周囲の協力により歌舞伎に復帰した喜久雄は芸の道に邁進。一方、俊介は逃亡時代の薬物の影響か、壊死により両足を切断。それでも舞台に立ち続ける俊介。

その後、俊介を失った喜久雄は芸の道を極めるあまり、狂気を発するようになり…。

凄まじい物語(ネタバレ)

『青春篇』でも、壮絶な役者いじめやドサ回りの苦労がありました。でも、『花道篇』ではさらなる不幸が二人を襲います。

芸を極め用途すればするほど、火事や事故など周りが不幸に見舞われていくんです。

俊介が壊死で足を切断する話は明治初期の歌舞伎役者・澤村田之助を彷彿とさせられます。そしてラスト、喜久雄が自らの芸と世界とが渾然一体となる様子は、美しく恐ろしい。

やがて俊介を亡くした時、舞台上で俊介に語りかける喜久雄のシーンは思わず涙が溢れました。

芸の世界に旅立つ喜久雄の姿に、私は『幕末太陽傳』の幻のラストを思い出しました。『国宝』の場合は「逃げる」ではなく「広がる」ですが。

『国宝 上 青春篇』

Audible
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Audible『国宝 下 花道篇』

なんでもっと早く『国宝』を読まなかったんだ…!と、過去の自分を叱責してやりたい思いにかられました。

でも、今だからこそ尾上菊之助さんの朗読に巡り会えたわけですからいいタイミングだったのでしょう。歌舞伎の台詞回しにうっとりしたり、キャラクターの演じ分けに物語の世界に没入したり。

幸せなAudible視聴でした。

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映画『国宝』の感想はこちら

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