八咫烏シリーズ5『玉依姫』 阿部 智里

八咫烏 イラスト ファンタジー

八咫烏シリーズ『玉依姫』ではいきなり神域へ連れてこられた人間の少女と、八咫烏が使える山神との物語が展開していきます。

これまでは、人の姿をした八咫烏の一族と、彼らの住む「山内」という世界で起こる物語でした。でも、今回は人間の世界が舞台。

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山内の世界観なんて、引っ張ろうと思えば、いくらでも設定を継ぎ足して長い物語にできるだろうに。

阿部先生はたった5冊目で世界の謎を明らかにしてしまった。いや~なんとも思い切ったものだ。

阿部智里さんは読者の期待を裏切る作家だ。もちろん、いい意味でですけど。

『玉依姫』あらすじ

高校生の志帆は、母の故郷である「山内」村へ向かう。これまで音信不通だった伯父が突然訪ねてきたからだ。

祖母の伯父に対する厳しい態度に訝しみながらも、祖母に内緒で山内村を尋ねると、志帆は村人が崇める神への生け贄にされてしまう。

祖母はかつて、母を生け贄から守るために逃げたのだった。

山神のいる神域では、大きな猿たちからまだ幼い山神を育てろといわれ困惑する志帆。彼女前に「奈月彦」という山神の使いが現れる。

癇癪を起こしては雷を落とし、八咫烏を傷つける山神を恐れた志保は山を逃げ出すが…。

いい意味で裏切られた展開

一作目『烏に単は似合わない 』では、独自の世界観を見せつつ、宮中で起こるミステリを。

二作目からは、奈月彦に使える雪哉という少年の視点で、八咫烏の世界の謎が徐々に明らかになっていきました。

前作『空棺の烏』で大敵・猿との大戦が間近に迫り、てっきり最新作では猿との戦いが描かれるのかとおもいきや、まさかのラスボス、山神が登場。

彼をめぐる謎が物語の主軸になっていきました。

これまでの作品では、山神は八咫烏の世界の創造主であり、敬うべき存在と思われていたのが、かんしゃくをおこす幼子のような山神に、八咫烏も、志帆も手を焼いていきます。

山神が神たるためには、体を赤ん坊から生まれ変わらせる必要があり、志帆は彼を育てる母親役として人身御供にされたのでした。

これまで書いてきた世界とは、真逆の視点から描く、というのは、実は勇気がいることなんじゃないかと。人気もあるシリーズなのに、成功パターンをあっさり捨てて、新しい物を書いていく。

阿部智里さんの作家魂のすさまじさを感じるとともに、これからどんなものを書いていくのか、という期待にワクワクします。

それにしても、山神の癇癪で殺された八咫烏は誰なんだろう…?茂丸?千早?それとも、雪哉…?思い切ったことをする阿部さんのことなので、雪哉をあっさり死なしてしまうことは十分考えられるので怖い。

それは次の『弥栄の烏』で明かされることになるのですが…。

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『玉依姫』で残る謎

山内創生の秘密が開示されたと思うと、登場人物たちの衝撃の死が次々と襲ってくる怒涛の展開だった『玉依姫』ですが、何度か読み直すと、いくつか謎が残っていました。

山神の真名が書かれているかもしれない村の儀式の手引書は、最初、志保の祖母久乃と、大天狗の潤天が盗み出す算段でした。

しかし、久乃が途中で亡くなってしまったため、手引書の行方については書かれていません。

もし、この時点で潤天が手引書を手に入れていたとしたら、第二部の展開にも関わってくるかもしれませんね。

八咫烏シリーズ感想

未読の皆さまには、まず第一部からお読みいただければ幸いです。『黄金の烏』までがアニメ化されています。各巻の概要と感想をまとめるとこんな感じです。

第一部

第二部

外伝

幕間(外界視点からの山内)

松崎夏未さんによるコミカライズ

烏に単は似合わない

烏は主を選ばない

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