『後宮の烏7』はいよいよ最終巻。神々との戦いと人の戦い、そして烏妃という存在に終止符が打たれます。
『後宮の烏7』あらすじ
烏連娘娘の半身を探すため、界(ジェ)島に向かう寿雪。一方、沙那賣(さなめ)家の当主は寿雪を疎い、次男に命じて北方での反乱を企てる。
寿雪は開放されるのか、反乱は防げるのか、神々の戦いの行方など、これまでの謎が回収されています。
淡々とした終わり方
クライマックスというなら5巻か6巻のほうが盛り上がった印象があります。
半身を得た烏連娘娘は寿雪の元を離れ、後は神同士の戦を見守るだけ。新たな巫女となった阿兪拉(あゆら)が戦況を伝えます。
そこで、もう寿雪は神の声を聞くことができないんですね。
そして、ラスト。淡々としながらもとても美しいラストでした。男と女ではなく、それを超えた半身としての関係を高峻と寿雪は獲得したのですね。
鶴妃の実家・沙那賣(さなめ)家の当主と兄、次兄それぞれの確執と陰謀が、異世界の風土とともに描かれます。父親から謀反を誘発させるよう命じられた次兄の亘が北方に向かいます。
ここでも、ただ人を描くのではなく、地域の気候や生業などが詳細に描かれるのはさすが。
『後宮の烏』全体の感想
架空の中華ファンタジーは数多く存在しますが、ここまで異世界を綿密に作り上げた作品はめったにありません。
それは、ただ不思議な現象や風習を描くのではなく、歴史や宗教、地理や民俗まで、丁寧に作り込んでいるからでしょうね。
おかげで物語に入り込みやすかったし、民話や言い伝えが後の伏線になっていたりと、物語の展開も素晴らしかったです。
そして、高峻が寿雪へ贈る美味しそうなお菓子など、食べ物の描写も詳細で寿雪でなくても頬張りたくなりました。
ただ、結局、烏連娘娘と鼈(ごう)の神がなぜ争っていたのかも説明されないままだったし、寿雪たちの後日譚なども外伝などで補完してほしいかなと思います。