『四十九日のレシピ』の伊吹有喜さんのデビュー作『風待ちのひと』読了。読み終わった時、疲れた心がちょっと癒やされました。
『風待ちのひと』あらすじ
妻の不倫や母の死で精神的にダメージを受けた須賀。彼は、海沿いの町・美鷲に亡き母が残した家の整理をかねて、夏の間だけ滞在することになった。
生きる気力を失いかけた須賀の前に現れたのは、トラック運転手たちから「福の神のペコちゃん」と呼ばれる喜美子。
須賀は喜美子から、「母親の家の整理を手伝うかわりに、クラッシクのコレクションを聞かせて欲しい」と頼まれる。
初めは喜美子を「おせっかいなオバチャンだ」と思っていた須賀。けれども、彼女の献身的な世話で徐々に生きる力を取り戻していき…。
大人の男女が、同級生のように過ごす夏休み
手づくりのポテトフライ、ラムネ、イカ焼き、ほろ甘い瓜。出てくる食べ物も、夏休みを感じさせる美味しそうなものばかりでした。
最初は、人生を達観した「福の神のペコちゃん」である喜美子が、須賀を助けていく話なのかと思っていました。
でも、途中から明るくて働き者の喜美子にも、夫と子どもを早くに亡くした悲しみや、エリートの須賀に対してのコンプレックスなど、弱い部分もみえてきます。
そんな弱い部分をもつ須賀と喜美子。二人はいつのまにかお互いを支えあっていくようになっていきます。
喜美子が働くバー兼定食屋のマダム、マダムの孫の舜と舞も二人を見守っています。この周りの人々も温かくでやさしかった。
反対に須賀の奥さんはダメ人間でしたね。自分で不倫しといて弱った亭主をほっぽり出して子どもも他人任せ。
そのくせ、自分の飽きた所有物を取られると怒り狂うんですよね…。
伊吹有喜作品の感想
- 『ミッドナイト・バス』…家族の再生とバスの乗客たちの人生
- 『雲を紡ぐ』…盛岡のホームスパンを題材に、祖父と孫の交流と母親との葛藤
- 『風待ちのひと』…デビュー作。傷ついた男女がともに過ごす一夏の物語