『ラスト、コーション 色・戒』アイリーン・チャン(張愛玲)

上海イメージ 小説感想

アン・リー監督による映画化で話題となった『ラスト、コーション』の原作『色・戒』。

切なく美しい小説です。
この文庫には、色・戒の他、短編が三作掲載されており、昔の上海や香港の華やいだ都市の様子が描写されています。

著:アイリーン・チャン, 翻訳:南雲 智
¥2,100 (2026/01/10 05:46時点 | Amazon調べ)

色・戒

映画「ラスト・コーション」の原作。香港の学生・王佳芝は抗日スパイとなり、敵の特務機関員・易の暗殺に関わるが失敗。

2年後、再び易と再会し、逢瀬を重ねながら暗殺の機会を伺う佳芝。だが、逢瀬の喜びと、任務への緊張、易への思いが交錯してゆく。

やがて迎えた暗殺の日、彼女は易を宝石店に連れ出すことに成功するが…。

原作の易は、トニー・レオンのように男前ではなく、もっとおっさんな感じですね。映画のようなエロティックな描写は少なく、主人公の心の動きと、ノスタルジックな上海の街の描写が丁寧に描かれています。

まるで、自分が当時の上海の街を歩いているかのよう。街の描写と暗殺まで刻一刻と時間が過ぎていく焦りが相まって緊張感にページをめくる手がとまらない。

出演:トニー・レオン, 出演:タン・ウェイ, 出演:ワン・リーホン, 監督:アン・リー
¥2,625 (2026/01/12 03:45時点 | Amazon調べ)

愛ゆえに

アイリーン・チャンが映画脚本を手がけた作品を自らノベライズ化した作品。

映画館で運命的な出会いを果たした男女、その後、彼女は友人の紹介で子どもの家庭教師となるが、その家の主人こそが、あの夜出会った男だった…。

二人は密やかに思いを育ててゆくが、自堕落で無責任な彼女の父親が、2人の関係を窮地に追い込むことになり、彼女はある決断を下す。

映画脚本のせいか、物語はロマンチックで起承転結がはっきりしていてわかりやすかったです。

浮き草

戦後中国大陸から、香港へ脱出し、移転を繰り返しながら新天地を探し船に乗り込む主人公。

船で見かけた異国人夫婦との交流、主人公の過去が交錯しながら物語が進んでいく。

お久しぶり

仲の良い従姉妹同士と、その娘。たわいもないおしゃべりの合間から、彼女たちの人生の悲哀がかいま見える物語。

戦後、中国のインテリ層の暮らしが描写されています。旧式な結婚をしていても、女性たちはある程度の自由があったり、高い教育を受けた女性は、自ら職を得て自活をすることもできたようです。

この原作を書いた女流作家アイリーン・チャンは、上海育ちで、戦争の影響で香港へ移住、傀儡政権幹部との結婚と離婚。

自作が本国で発禁処分、後に渡米。自身の小説以上にドラマチックな人生を歩んだ女性でした。

タイトルとURLをコピーしました