向田邦子はどんな本を読んでいたのか、どんな本が「向田邦子」を作ったのか。『向田邦子の本棚』は彼女が読んでいた本と本にまつわるエッセイです。
本読みの幸福
将来の夢は「本屋の女房」だと語るほど、本好きな幼少期を過ごした向田邦子さん。すぐに子供向けの本では飽き足らなくなり、親の目を盗んでは父親の蔵書を漁る幼少期を過ごします。
小説から古典、アートや、骨董、動物、食べ物など。興味を覚えたものはあらゆるジャンルの本を読んでいて、本屋では
時々はふだん読まない分野の本棚に立ち止まってみることは必要よ
だと語っています。
また、読書についての文章もすてきなんです。
本を読んでいる途中、あるいは読み終わってから、ぼんやりするのが好きだ。砂地に水がしみ渡るように、体のなかになにかがひろがってゆくようで(略)
夜中の薔薇
私も読んでいる途中や読了後に、本を胸に抱えてぼーっとします。読書の「幸福」が体に染み渡っていく感覚を、向田さんは的確な言葉で表して、改めてすごい作家さんだと思いました。
この感覚はサウナの「整う」に近いような気がします。あくまで個人の感想ですが。
惚れ込んだ小説家
向田邦子がその作品に惚れ込み、映像化を望んだ野呂邦暢の小説『落城記』。エッセイでは映像化の許可後、野呂邦暢氏が急逝したこと、その作品について綴っています。
向田邦子の本棚には、映像化した『落城記』のほか、芥川賞を受賞した『草のつるぎ』がありました。
野呂邦暢は今も本好きの間で愛されている小説家で、私も大好きな作家です。
食いしん坊の本棚
食いしん坊で自分で料理をつくるのが大好きな向田邦子さん。好きが高じて妹さんと小料理屋を開くほどでした。
向田エッセイにも食べ物の話が多く登場します。ここでは「食いしん坊に送る100冊の本」として食にまつわる本を取り上げています。
『おそうざい十二カ月』などのレシピから小説まで、見ているだけでも美味しそう。
向田邦子を作った本
『向田邦子の本棚』には当時のインタビューや関係者の文章も掲載されています。それを読むと、いかに向田さんが博識であったかが見て取れるのです。
一つの事柄を深く広く吟味された文章に思わず「なるほど~」と思いながら読んでいました。
演出家の久世光彦さんは「私立向田図書館」と称して彼女の知識を称賛しています。それは単なる情報ではなく、向田邦子によって構築された「知識」なのでしょう。
なんだか、向田邦子さんの頭の中を垣間見れたような気がする本でした。