万城目学さんの描くエッセイは、なんとも不思議な出来事ばかり。現実と虚像が日常と非日常が入り混じっています。
不思議で面白い小説を書く人は、やはりエッセイも不思議で面白いのです。
エッセイというより、もはやショートショート
風が吹けば小説を書く
万城目さんが小説を書くきっかけとなったお話。高校時代「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話をかけ、という課題を出された万城目。
「不倫の末に相手を殺して埋めた後、咲いた花を売って大儲けした」という突拍子もない物語をでっちあげました。
しかし、なぜだかそれが先生に褒められ、それが小説をかくきっかけとなったのだとか。
人間、何が影響するかわからないものですね。
非日常な作家の日常
万城目さんの日常には、なぜだか不思議な出来事が起こります。
幼少期の万城目少年が万博公園の茂みで不思議な鳥と遭遇する話「藪の中」。
真黄色のダチョウのような二足歩行の鳥とオレンジ色の鳥に遭遇した万城目少年。着ぐるみかと思ったら、茂みからニワトリのような三本足が見えていたのだとか。
ご両親や妹さんも目撃した不可思議な事件。けれど全員、鳥の記憶があいまいで現在もその正体はわからないまま。まさに「藪の中」というお話。
いったい鳥の正体は何だったのでしょうか?
私は「ビッグバードのかぶりもの」に記憶が補完されたという、非常に夢のない推理なんですが。
ホルモーとか鹿男とか
小説を書くにあたり、題材に悩んでいた万城目さん。昔から自分の周りに見える「茶きん絞り」の顔を持つ小さなモノたちを登場させよう。
と思って書いたのがデビュー作『鴨川ホルモー』なんだとか。
モンゴル旅行で出会ったトナカイ(実は会話ができる)から「重大な真実」を授けられ、『鹿男あをによし』を書いた。…らしい。
しかしこれは、万城目さんではなく、あくまで「万太郎」という架空(?)の青年が体験したことなので、どこまで本当かはわかりません。
それでも、マキメさんの文を読んでいると実世界でも「オニ」は存在していて、鹿は話すことができるような気がしてきます。
篤史My Love
注文住宅を紹介する番組『渡辺篤史の建もの探訪』をこよなく愛する万城目さん。
渡辺篤史さんの類まれなコメント力に感動し、自らも「渡辺篤史ごっこ」をしてしまうほどハマってしまったそう。
文庫の後書きによると、万城目さんは「建もの探訪」放送二十周年を記念した本の寄稿を依頼されたそうです。しかし(篤史への)憧れは憧れのままにしておきたいと、執筆を辞退したのだとか。
ただ、その後書かれた『ザ・万遊記』のエッセイ「篤史フォーエバー」は掲載されているとのこと。