向田邦子さんの『字のないはがき』は後に絵本化されたり、教科書に掲載されたりして有名なエピソードです。もともとはエッセイ集『眠る盃』の一編でした。
○の書かれた葉書
後半はエッセイで、猫好きとして知られていた向田さんの愛猫の話や、家族のことなどが語られます。
なかでも印象的だったのが、「○の書かれた葉書」にまつわる話です。
戦争中、向田さんの末の妹が疎開することになりました。まだ字が書けない妹に、父親は自宅の住所を書いた葉書をたくさんもたせて「元気なら○を書いて送ること」と言って送り出します。
しかし、最初は大きかった葉書の○が次第に小さくなっていき、途中からは✕に。最後は葉書も届かなくなり、病気でやせ細って帰ってきた妹を父親が抱きしめて号泣する…というお話です。
この話は他の漫画にも掲載されていて、向田作品の人気エピソードとなっています。
『字のないはがき』をモチーフにした作品
現在「○の書かれた葉書」はさまざまなコンテンツで引用されています。
漫画『娚の一生』では、預かっていた親戚の子と別れる時、葉書を持たせるシーンが登場します。
同じく漫画の『書店員 波山個間子』では、ブックアドバイザーの波山さんが、お客さんの「手紙に○とか×とか書く話が読みたい」と要望に、この本をおすすめしています。
そして「○の書かれた葉書」は『字のないはがき』として、小説家の角田光代さん、西加奈子さんらにより絵本化も。こちらも読んでみたい。
