瀬尾まいこさんの『図書館の神様』は、傷ついて落ち込んで、うだうだと日々を過ごしたことのある人に読んでほしい本です。
成長も回復も、そう簡単にはいきません。そんなじれったさと、ほんの少しの前向きな気持ちがこの本には込められています。
『図書館の神様』は、同じく瀬尾まいこさんの『天国はまだ遠く』と同じく、傷ついた女性の癒しの物語なのですが、こちらの主人公・清はちょっと複雑でした。
『図書館の神様』あらすじ
高校時代、清はバレーボールに打ち込んでいました。ある時、同級生にミーティングできつく当ってしまい、その同級生は自殺してしまいます。
その日をさかいに、それまで名前の通り「清く正しく」生きてきた清は、いいかげんで投げやりな生活をおくりはじめます。
なりゆきで田舎の学校の教師になってみたり、奥さんのあるひとと不倫してみたり。
赴任した学校で顧問を任された文芸部。そこでたったひとりの部員・垣内君と出会います。
垣内君のペースに乗せられた清は、これまで接点のなかった図書館や本、文学に触れるうちに、少しずつ変化していきます。
これまでのいい加減だった生活や、教師としての仕事にもやりがいを見出していきます。
うだうだしている主人公とやさしい人々
この主人公・清は物語の半分くらいまでずっとうだうだとすごしています。そのうだうだ感がなんともじれったいのです。
正直、清には共感できない部分が多くありました。清の周りの人たちはみんなやさしくてすてきなんです。
マイペースでひょうひょうとした文芸部員の垣内君。おおざっぱでおおらかで姉思いの弟・拓実。
不倫相手の浅見さんでさえ、途中まではとてもやさしい。(そして瀬尾さんの描く不倫話はやっぱりドロドロしていない)
そんなやさしい人たちに触れ合うこと、垣内君を通して読んでみた文学の世界。そんな交流の中から、清は自分の進むべき道をようやく見つけだします。
物語の終盤、少しふっきれて行き先を決めた清にはどんな生活がまっているんでしょうか。あまり共感がもてなかったけれど、でもやっぱり清には幸福に過ごしてほしいと思います。