『おちくぼ物』は平安時代、継母にいじめられる姫君を貴公子が救い出して幸せになるという、まさに「平安時代版シンデレラ」のような物語。
現代のラノベ風に言えば「継母にいじめられていた私がイケメン貴族に溺愛される件」といった感じでしょうか。
古典と言っても、田辺聖子さんが現代風に解説・アレンジを加えてくださっているのでラノベ感覚で楽しめます。
ラノベのように読める古典
源氏物語は「超」がつくほどの上流貴族ですが、『おちくぼ物語』のお話にでてくるのはやや中流の貴族たち。そのせいか喜怒哀楽が激しいし、けっこうお下品な表現(いわゆる下ネタ)もでてきます。
姫に横恋慕する好色の典薬の助なんかは、彼だけねちっこい関西弁をしゃべったり、腹を下して漏らしてしまったりとかなりお下品。
最後は少将の部下にコテンパンにやられるところもコミカルで面白いです。
しかしまあ、人のやることなんて千年前も今もあんまり変わらないんですよね。今でもこうした好色オヤジっていますし。
でも主人公である姫君はどこまでも美しくて人を恨んだりしません。その分、女房の阿漕(あこぎ)や後に姫の夫になる少将たちが姫をいじめていた北の方(継母)をいじめ返すところが痛快でした。
寺社へのお参りの場所を横取りしたり、召使いを引き抜いたりと何度もネチネチと行うのですけど、それもまた人間臭くて面白いのです。
田辺聖子さんのユニークで軽快な文章
田辺聖子さんの『おちくぼ物語』では、難しい古典文学をライトノベルのように読みやすくアレンジされています。
舞台が京都なのに典薬の助がコテコテの大阪弁だったり、女房の阿漕(あこぎ)が現代風のセリフでしゃべったりするので登場人物のキャラクターがわかりやすい。
他にも、平安時代の結婚事情や食べ物や部屋の作りに至るまで田辺聖子さんの解説が入っているので、平安時代について知識がなくとも楽しめるのです。
以前紹介した『蜻蛉日記をご一緒に』もそうでしたが、田辺聖子さんの文章は古典文学をわかりやすく身近に感じさせてくれて、また別の作品も読みたくなってしまいます。
平安時代の関連本
- 『はなとゆめ』…清少納言が主人公、道長が悪役。
- 『蜻蛉日記をご一緒に』…千年前も夫への悪口は同じ
- 『おちくぼ姫』…平安版シンデレラ
- 『超訳百人一首うた恋い』…百人一首をモチーフにした平安漫画、紫式部も登場
- 『日と月の后 上』…12歳の中宮彰子が紫式部と出会い成長するまで
- 『日と月の后 下』…成長した彰子は紫式部の教えのもと、慈悲深い国母へ
- 『源氏物語解剖図鑑』…イラストで見る源氏物語
- 『百人一首解剖図鑑』…イラストで見る百人一首とその時代背景