『源氏物語解剖図鑑』と固いタイトルですが、決して難しくはありません。
これまで、私の『源氏物語』の知識は、主に漫画『あさきゆめみし』で得たものだけでした。
しかし2024年の大河ドラマ『光る君へ』放送に伴い、「もう少し源氏物語を知りたい…。でも難しい本はイヤ」などと思っていた矢先、この本を見つけました。
この本では、源氏物語54帖をストーリーごとに解説。かわいい猫と犬のイラストで源氏物語の各章のあらすじと、平安文化を紹介してくれます。
後ろ盾が物を言う貴族女性
「雨夜の品定め」で頭の中将たちから「少し身分の低い女が良い」と言われた源氏は、さっそく地方受領の妻・空蝉にアプローチします。
空蝉は今でこそ中流貴族の妻ですが、もとは上流の生まれ。父親が亡くなり後ろ盾を無くなったため落ちぶれてしまったのです。
貴族の女性はいかに高貴な生まれでも、実家の後ろ盾がないと落ちぶれてしまうんですね。
末摘花も紫の上も宮家の血筋ですが、後ろ盾がないことで落ちぶれたり、正妻の座を追われてしまったりしていますし。
私が驚いたのが、光源氏が女性たちを住まわせた六条邸。春・夏・秋・冬をテーマにした4つの屋敷が作られています。(春:紫の上、夏:花散里、秋:秋好中宮、冬:明石の君)
しかし、イラストで見たら明石の君の冬の町だけ建物が少ないんですよ。
池がないのは冬がテーマだからかもしれませんが、それでも目に見えて屋敷の格差があるとは…。身分の差って切ないですねえ…。
持ち物の格式
とにかく平安時代は身分と格がすべてといっても過言ではありません。牛車や楽器、装束まで、それぞれ細かい格式があり、所有できる身分も決まっていんです。
楽器の格
源氏物語では、光源氏ゆかりの女性たちが女楽を演奏するシーンがありますが、ここにも身分の違いが楽器に現れているのだそうです。
この中で最も格が高いのが琴(きん)で、女三の宮が弾くことで身分を表しているんですって。そして、最も身分の低い明石の君の琵琶は、オールマイティー使われたポピュラーな楽器だったようです。
- 琴(きん):7弦…女三の宮
- 和琴(わごん):6弦…紫の上
- 箏(そう):13弦…明石の女御
- 琵琶(びわ)…明石の君
女三の宮より演奏がうまいのに、格の高い楽器を与えられなかった紫の上の心中を思うと切ないです。
源氏物語に描かれるもの
『枕草子』では清少納言と中宮定子の「香炉峰の雪はすだれを掲げて見る」というエピソードがあります。
「朝顔」という話の中にも、光源氏がすだれを上げて紫の上と雪遊びを眺めるシーンがあるのです。作者によると『枕草子』からの引用なのだとか。
しかし、『紫式部日記』で清少納言をかなりこき下ろしていた紫式部。清少納言は嫌いだけれど、彼女の作品は認めていたということなのでしょうか…?
ちなみに、紫式部は登場人物の空蝉のモデルと言われています。彼女自身が中流貴族の出身で年上の夫がいるところなども似ています。
だとすると、彼女の光源氏は誰なのでしょうね。大河ドラマのように藤原道長なのかな…。
平安時代の関連本
- 『はなとゆめ』…清少納言が主人公、道長が悪役。
- 『蜻蛉日記をご一緒に』…千年前も夫への悪口は同じ
- 『おちくぼ姫』…平安版シンデレラ
- 『超訳百人一首うた恋い』…百人一首をモチーフにした平安漫画、紫式部も登場
- 『日と月の后 上』…12歳の中宮彰子が紫式部と出会い成長するまで
- 『日と月の后 下』…成長した彰子は紫式部の教えのもと、慈悲深い国母へ
- 『源氏物語解剖図鑑』…イラストで見る源氏物語
- 『百人一首解剖図鑑』…イラストで見る百人一首とその時代背景