『つむじ風食堂の夜』吉田 篤弘

食堂のイメージ 不思議
食堂のイメージ

『つむじ風食堂の夜』は、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』と同じ、懐かしさの残る架空の街・月舟町を舞台とした物語。

わたしは食いしんぼなので、物語のなかに食堂がでてくるお話が好きです。

本なら『グアテマラの弟』かもめ食堂』など、肩ひじ張らないおいしい料理と、そこに集まる人々の日常は、読んだり見たりするだけで幸せな気分になれるのです。

著:吉田 篤弘
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『つむじ風食堂の夜』食堂にはもともと名前がなく、十字路にあつまるつむじ風にちなんで客たちが「つむじ風食堂」と呼ぶようになったのです。

メニューは食堂ではおなじみの定食をフランス風アレンジした料理。

店の常連には人工降雨の研究から「雨降りの先生」と呼ばれている「私」、舞台女優の奈々瀬さん、帽子屋の桜田さん、果物屋の青年など。彼らは時おり言葉をを交わしながら食事をしています。

物語の舞台となる月舟町はなんとも不思議で懐かしい雰囲気の町です。路面電車が走る町、坂の上の銭湯から流れるお湯が地下を流れる音。

商店街でひとつだけ、夜遅くまで店を開けている果物屋からは、果物の放つあかるい光…。

行ったことがない、架空の町のに、懐かしさで胸がギュッと掴まれてしまいます。

どこか懐かしい月舟町

どこかにあって、どこにもないような、そんな場所。私も主人公のように月舟アパートメントの屋根裏部屋に住み、同じ机を二つ並べて研究と文章を書いて日々を過ごしてみたい。

作者の吉田 篤弘さんはクラフト・エヴィング商會の方なのだそうです。クラフト・エヴィング商會は『どこかにいってしまったものたち』などノスタルジックで不思議な品々を紹介した本を作っていて、クラフト・エヴィングという名前は稲垣足穂の文章中からとられたのだとか。

この本を読むと稲垣足穂の『一千一秒物語』を思い出したのは、そういうつながりがあったからかもしれません。

つむじ風食堂の夜は映画にもなっています。

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