宮下奈都さんの「誰かが足りない 」。レストランと食べ物にちなんだほっこりとした話かとおもいきや、意外な視点で物語が綴られます。
様々な人がレストランに予約を入れるまでの、オムニバスになっているのです。
古くからの老舗で、人気のレストラン・ハライ。予約困難なこの店に、どんなに人々が、どんな思いで食事にこようとしているのか…。
就職活動に破れ、彼女にも去られた青年。認知症のため、愛する夫との思い出を忘れてしまう老婦人。母の死が原因でひきこもり、ビデオカメラを通じてしか人と話せない青年…。
孤独感を持つ人々
彼らに共通するのは「孤独感」でしょうか。状況は様々ですが、彼らはみな、対人関係に孤独感と閉塞感を感じているのです。
たった一人でいても、心配する家族がいたとしても。
けれど、彼らは今の状況から、踏み出すきっかけとしてレストラン「ハライ」を訪れるのです。
願わくば、一杯のスープやオムレツが、彼らの晩餐を彩り、明日への一歩を踏み出すことができますように。