『そんなときは書店にどうぞ』は、書店や出版社の人々との交流を描いたエッセイ。映画『夜明けのすべて』の舞台裏や書店とのやりとりが赤裸々に、そしてユニークに綴られています。
個性豊かな書店(と出版社)の人々
読み始めはちょっと不安でした。だって結構、出版社員との小競り合いが赤裸々書かれているから(笑)。
出版社の営業「カルカン先輩」はパニック発作を持つ瀬尾さんに対して扱いがぞんざい。そして書店員の方々も瀬尾さんが書店を訪れても「ストーカーかと思いました。」という始末。
え…?これもしかしてディスりエッセイなのか…?
しかし、読み進めると書店員さんの本への愛と、出版社の方々の本への情熱がひしひしと伝わってきました。
瀬尾さん自身も彼らの情熱を受けて、「書店のために何かしたい」と自らイベントを立ち上げています。

実は、この本の印税と収益は書店のために使われるそうです。でも、本の帯の後ろにさらっと書いてあるだけ。
チャリティーを全面に出したほうが売れそうだけれど、あえて書かないのが粋ですね。
映画『夜明けのすべて』エピソード
『夜明けのすべて』の映画化について裏話はおもしろエピソード満載。
主演の上白石萌音さんと北村北斗さんが、同行した娘さんと遊んでくれたり、娘さんの手紙を「大事なものボックスにいれるね」と言ってくれたりと、お二人の優しさがにじみ出るエピソードでした。
上白石萌音さんと北村北斗さんのエピソードすてきなので、お二人のファンの方にも読んで欲しい…。
瀬尾さんはこうしたイベントや見学に娘さんを同行させているのですが、娘さんが「秘書です」と自己紹介するのが可愛らしい。
そういえば、以前、ほしおさなえさんのイベントに行ったときも娘さんがイベント仕切ってくれていたなあ…。名作家の娘さんは名秘書なのかもしれない。

『そんなときは書店にどうぞ』
短編『そんなときは書店にどうぞ』は、小説『幸福な食卓』の後日譚。佐和子の彼氏の弟、貫太郎の視点で描かれる書店のお話です。
瀬尾まいこ作品感想
- 『幸福な食卓』…普通じゃない。でもすてきな家族
- 『優しい音楽』…不倫相手の子どもを預かることになった女性
- 『春、戻る』…突然、「兄」と名乗る年下の男性が現れる
- 『おしまいのデート』…孫と祖父、教師と生徒、偶然の出会いと別れ
- 『図書館の神様』…やる気のない教師と文芸部の少年
- 『そして、バトンは渡された』…何人もの「親」をもつ女の子の話
- 『夜明けのすべて』…PMS、パニック障害に苦しむ二人と、それを見守る大人たち
- 『見えない誰かと』…作者の教師時代の思い出や家族のことを綴ったエッセイ
- 『そんな時は書店にどうぞ』…書店や出版社の人々との交流をユニークに綴ったエッセイ