「おばあさんの魂」は酒井順子さんが、おばあさんたちの人生と経験を学び、高齢化社会における「大おばあさん」時代の生き方を模索するエッセイです。
さすが、酒井順子さん。視点の鋭さと文章のセンスがすばらしい。
今までの高齢者とこれからの時代の高齢者では、ライフスタイルも考え方も違うのです。
そのため、これからおばあさんになる私たちは、年をとった時どう生きたらいいか今から探していかなければならない。「おばあさん」というだけで労ってもらえる時代ではないわけです。(まわりが高齢者だらけだからね)
新しい時代の「おばあさん」になるために
しかし、新しい時代の「おばあさん」になるためには、やはり先達たちの人生から何か学べるんじゃないかと、様々な分野で活躍したおばあさんたちの人生に迫ります。
有名な「佐賀のがばいばあちゃん」、庭を愛したターシャ・テューダー、老いてもなお、男をひきつけるジョージア・オキーフやマルグリット・デュラス…。実に様々なおばあさんたちがいます。
有名無名、両方のおばあさんの人生をひも解くため、酒井さんはご自分のおばあさま(当時99歳!)にもインタビューしています。
みなそれぞれ困難な時代を生き抜いて、次の世代にいろいろなものを伝えてくれています。まさに、人生そのものが私たちの教科書といえそうです。
文の中で、すてきな言葉を見つけました。
おばあさんは、子供であれ、考えであれ、道であれ、「より遠く」の未来まで、何かを伝えていこうとしている。
おばあさんの魂より
果たして、わたしが「おばあさん」になったときに、何かしら伝えられるものがあるのだろうか…?
それは日々の中で模索しながら、獲得していくしかないのでしょうね。
表紙は日本画家の小倉遊亀さん。越路吹雪さんの肖像を描いた方で、このかたもかなりの長寿でした。
酒井順子さん作品感想
『ズルい言葉』…日常のあいまいな言葉の意味を紐解くエッセイ