『幸福な食卓』はとある家族のお話。この家族は普通じゃないかもしれない。でも、家族のかたちはそれぞれ。心が通じ合っていることこそが大事。
『幸福な食卓』あらすじ
ある日の朝食のとき、父さんが「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」と、言い出した。
数年前のある事件から母さんは家を出て一人暮らし。でも時々顔をだしてご飯をつくりにきてくれる。
ひょうひょうとした秀才の兄・直ちゃんは大学に進学せず、農業を始めた。
じんわりと幸せな物語
はたから見たらこの家族は崩壊しているようにみえるかもしれない。
父親は脱父親宣言、母は家を出ているし、兄もかなりぶっとんだ性格だし。
でもみんな、相手のことを思いやり、尊重し合って暮らしている。
「普通」の暮らしをしていたって、心が通わない家族なんて珍しくないし、こういうバランスのとり方もありなんじゃないかなと思う。
ほんとうに大切なのは家族の「型」じゃないのです。
物語の終盤でとてつもなく悲しい出来事が起きた時、家族にに対してきつい言葉を吐いてしまった佐和子。
そんな彼女を怒るのではなく「そんなことを言うほど、傷ついているんだね。」と言えるのってすごいことだと思うんです。
瀬尾さんの小説にでてくる人たちは、みんなどこか憎めなくてやさしい。
直ちゃんの彼女、派手で豪胆な小林ヨシコは佐和子が落ち込んでいるとわざわざシュークリームをつくってやってきたり、彼氏の大浦君は単細胞だけども明るくて無邪気。
疲れた時に甘いものを食べると元気がでるように、瀬尾さんの小説を読むと、じんわりと幸せな気分になれます。
『そんなときは書店にどうぞ』は、瀬尾まいこさんと書店員さんとの交流を綴ったエッセイ。巻末には『幸福な食卓』の後日譚となる短編が綴られています。
瀬尾まいこ作品感想
- 『幸福な食卓』…普通じゃない。でもすてきな家族
- 『優しい音楽』…不倫相手の子どもを預かることになった女性
- 『春、戻る』…突然、「兄」と名乗る年下の男性が現れる
- 『おしまいのデート』…孫と祖父、教師と生徒、偶然の出会いと別れ
- 『図書館の神様』…やる気のない教師と文芸部の少年
- 『そして、バトンは渡された』…何人もの「親」をもつ女の子の話
- 『夜明けのすべて』…PMS、パニック障害に苦しむ二人と、それを見守る大人たち
- 『見えない誰かと』…作者の教師時代の思い出や家族のことを綴ったエッセイ
- 『そんな時は書店にどうぞ』…書店や出版社の人々との交流をユニークに綴ったエッセイ