『図書館のお夜食』原田ひ香

図書館のお夜食イメージ 小説感想
図書館のお夜食イメージ

図書館のお夜食』は、書店員や司書など、年齢も経歴も違うスタッフたちが、自分と仕事について向き合っていく物語です。

作中、本の中に登場する料理が「まかない」として提供されます。それが本当に美味しそうで…!

もしもこんな図書館があったら、ぜひ通いたいです。

著:原田ひ香, イラスト:花松あゆみ
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『図書館のお夜食』あらすじ

職場でのトラブルで書店を退職した樋口乙葉。行き詰まっていた彼女はある日、オーナーから「夜の図書館」で働かないかと誘われる。

「夜の図書館」では故人作家の蔵書を専門に扱う。営業は夜の7時から12時まで。カフェでは毎日、本にまつわる料理が提供される。

図書館には管理人の篠井、司書の正子、書店員の綾子、古書店のなど、個性豊かな人々が働いていた。元警官の探偵や、まかないを作るカフェのマスターもいる。

そしてこの図書館を利用者たちも個性的。そのため図書館に様々なトラブルを運んできて…。

『図書館のお夜食』まかないメニューと感想

「夜の図書館」には、本にちなんだメニューがまかないで提供されます。

「しろばんば」のカレー

入館1日目から図書館の一風変わった運営スタイルに驚かされる乙葉だったが、スタッフは優しく、だされるまかないも美味しかった。

しろばんば』は井上靖の自伝的小説。しろばんばことおぬい婆さんが作るカレーを再現したもの。昔ながらの日本のカレーに、コンビーフや大根が入っています。添えられた水出しコーヒーも美味しそう。

「ままや」の人参ご飯

ワガママで有名な作家・田村がとつぜん図書館に押しかけてくる。亡くなった友人の作家・白川の蔵書を読みたいというのだが、整理されていないため、倉庫から運搬することになった乙葉たち。

田村が本を求める理由とは…。

「ままや」は作家・向田邦子の妹さんが営んでいた小料理屋。食通でもあった向田邦子さんは料理上手で、さまざまなレシピを遺しています。

素朴でおいしい人参ご飯は、疲れ果てた乙葉たちを癒やしてくれました。

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「赤毛のアン」のパンとバタときゅうり

図書館内にいつの間にか蔵書印のない本(太宰治の『女生徒』)が置かれていた。そのため図書館では急きょ、無くなった本がないか調べることに。

いつも冷静沈着な元司書、正子さんの人生とその秘密が明かされます。本が好きな女性同士で『赤毛のアン』の映画を見ながらお茶をする。

なんて贅沢な時間なんでしょうか。

田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん

覆面作家の高城瑞樹が死亡し、その蔵書を引き取ることになった図書館。高城の大ファンだった乙葉はそこで高城の妹と名乗る人物に会い、覆面作家の正体を想像する。

一方、蔵書印の無い本を置いた犯人が判明。犯人もその動機も意外なものだった。

それにしても、「本を万引きしてもいい」なんて、ひどい言い草です。ただでさえ薄利多売の本業界を追い詰める老人は出入り禁止にするくらいでは生ぬるい。読んでいて憤りました。

甘辛く煮付けた鰯の煮付けと、その出汁を使ったおからの煮物。関西では「炊いたん」というのですね。

作家をしながら一家を切り盛りしていた田辺聖子さん。カモカのおっちゃんとおしゃべりしながら食べたのでしょうかね。

森瑤子の缶詰料理

ここでは図書館設立の理由と篠井さん、そしてオーナーの謎が明かされます。

本置き去り事件を受けて、オーナーから図書館の一時閉館が通達される。蔵書整理の後、長い休みに入るという。休館中も給料は支払われるが、図書館員たちはぞれぞれ、自分の今後について考え始め…。

森瑤子さんは『デザートはあなた』でも美味しい料理と恋愛を描いていて食通なんですが、こうしたシンプルな缶詰料理も美味しそう。

まとめ

夜の図書館、本当にできないかな。そうしたら思い切り本を読んで、カフェで美味しいご飯とビールをいただくのに。

そして、もしアラブの富豪と出会えたなら、私もこんな図書館を建てたい。どこかに困っているアラブの富豪はいないかな…?

図書館・書店にまつわるお話

『図書館の神様』瀬尾まいこ…傷ついた教師と図書係のお話

『夢見る帝国図書館』中島京子…かつての帝国図書館を舞台にした過去と現在が交錯するお話

『古本食堂』原田ひ香…古本屋で本を紹介してもらい、神保町グルメを味わう

『古本食堂 新装開店』原田ひ香…古本屋にカフェが併設。本とコーヒーのセットが人気

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