『デザートはあなた』森瑤子

デザート 小説感想

デザートはあなた』は、ハンサムな男性が手料理で女性をもてなす、おしゃれで美味な恋物語。でも、それだけじゃないんです。

朝日新聞社の運営する本のサイト「好書好日(こうしょこうじつ)」。

その企画で「小説の中の食べ物」を募集していた時、真っ先に思い浮かんだのが『デザートはあなた』でした。

著:森 瑤子
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『デザートはあなた』あらすじ

大西俊介はテレビ制作会社に勤め親の残したコンドミニアムに住むリッチマン。おまけにインターナショナル・スクール出身。

趣味は釣りとバイクとそして料理。

それも男の手料理といった豪快なものではなく、イタリアンに中華、厳選された素材と手間を掛けた料理は本格的。

それを気の合った美女に食事をふるまい、「デザートはあなた」と言って口説くのだ。

お相手は小説家、女優、写真家にアーティスト、医者など、キャリアをもち自立した女性ばかり。しかし、いい雰囲気まで行くものの、なぜか毎回「デザート」にはありつけない…。

都会の大人の恋愛

時代はバブル期。お金持ちでテレビ制作会社勤務で料理ができてハンサム、女性側も美人で一流の仕事人ばかり。今読んだらファンタジーかと思うくらいの設定ですね。

それが森瑤子さんの筆にかかると、絵空事のような料理と恋愛が軽すぎず、かといって深刻になりすぎない大人の恋愛として成立しています。

まあ、あまりにもドラマのような展開なので現実味はまったくありませんが。でもいい意味でファンタジーとして料理と恋愛を味わえます。

出てくる料理がどれも美味しそうで。でもものすごく手が込んでいるので、なかなか再現ができませんでした。

唯一、作れたのが「スモークサーモンのオムレツ」でした。でも、当時はスモークサーモン自体珍しかったので、鮭で代用した覚えがあります。

恋愛だけじゃない。大人の責任とメセナ

『デザートはあなた』の、もうひとつのテーマが「メセナ」(企業が行う文化支援)。この小説で初めて「メセナ」という言葉を知りました。

大西俊介が仕事で出会い、惚れ込んだ彫刻家。彼はスペインのサグラダ・ファミリアの建設に参加しているが、資金不足のため苦労している。

そんな彼を助けようと、俊介はメセナを企画。各方面に働きかけるものの計画はなかなかうまく行かない…。

「デザートはあなた」はおしゃれな料理と恋愛の話だけではなくて、骨太な社会問題が描かれているのです。

おそらく、池井戸潤さんあたりが書いたら恋愛が全くない、熱血な企業メセナ小説ができるだろうな。それはそれで読んでみたい。

ドラマ『デザートはあなた』

大西俊介を岩城滉一、恋人の奈々子を毬谷友子、夏木マリ、かたせ梨乃など、豪華キャストで1993年にドラマ化されていました。

俊介の親友三四郎を忌野清志郎がやってて「一つの像をなんども作ったり壊したりしている」彫刻家の役が印象的でした。

ドラマオリジナルの池畑慎之介の回も好きだったな。

物語の中の架空の料理、作家の料理エッセイ、歴史の中の料理など。

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