『漢方小説』 中島たい子

漢方イメージ 日常系
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漢方を通じて人生の生き方…というのは大げさだけれど、日々を生きていく心構えみたいなものを、教えてくれる小説でした。

漢方小説 あらすじ

主人公は31歳の女性ライター、みのりは昔の彼氏が結婚するショックから体調を崩してしまう。
病院を当たってみるが原因は不明。
何件も医者を巡り、行きついた先が昔通っていた漢方医。

著:中島たい子
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漢方のイメージに似つかわしくない、若い漢方医にひそかに思いをよせながら、みのりは徐々に体と心のバランスを整えてゆく。

個性的な登場人物

物語の主軸は漢方なのですが、それ以外にも登場する面々が個性的でストーリーに面白みを加えてくれています。

タイタニックを「船というモンスターが次々と人を襲う話」と説明する天然の志保さん。

幽霊飲み仲間のサッちゃんは必ずラスト主人公が牧場に暮らすシナリオを書く(でもおもしろいらしい)
ヘタな手品にはまっていて、会うと必ずみのりを実験台にする大家さん。でもいつも縄抜けは悲惨な結果に…。
普段は淡白な食事なのに、突然午後3時に衝動的にエビチリを作って食べる主人公の母親。

食べたくなったら時間を関係なく食べたいときに食べたいものを食べる母親に「なんでこの人が病気にならず、私が病気になるのか」とみのりは嘆きます。

けれど、自分の欲求にあわせて食べたほうが精神的にもいいのかもしれない。食べたいものは体が欲するものらしいので。

自分の体に起きたことは

お医者様とはいえ病気にかからないわけじゃない。漢方の先生の後頭部には10円ハゲができている。みのりがそれを指摘すると先生はこんなことを言う。

自分が生み出す変化ですから、自分の一部でもあるわけです。

このセリフには、ちょっとやられました。実はわたしもちょっと持病があったので。

ふつう人間て病気をすると不安になるし、早くその不安のもとをなくしてしまいたくて焦る。でも病気も自分の体が起こした「変化」なんですよね。

決して望んではいない「変化」でも、医者任せにせず、自分の体に起こったことを客観的に見つめていければいいな。

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