文豪の作品と現代のイラストレーターがコラボした乙女の本棚シリーズ。詩人萩原朔太郎とイラストレーターしきみさんによる『猫町』は、幻想的な風景が広がるお話です。
ポチップ
『猫町』とは
三半規管に疾患のある(つまり、よく迷子になる)主人公が、散歩の途中迷い込んだ見知らぬ町。清潔で美しいその町は、実は見慣れた町だった。
反対方向から訪れるといつもの町が違って見える。そんな現象を描いた話。なのですが、萩原朔太郎の文章にかかると、いつの間にか不思議な世界へ誘われてしまうのです。
しきみさんの猫町
乙女の本棚シリーズは、さまざまなイラストレーターが参加しています。作品ごとに、イラストの文章へのアプローチも多種多様で面白いのです。
しきみさんのイラストは幻想的で、独特の「ずれ」があるように感じました。文章の核心はついているのにどこかちぐはぐで落ち着かない。
その「ずれ」が物語をより幻想的に、読者を裏側の世界へと導いてくれるのです。まるで今、自分がどこにいるのか…そんな不安と好奇心が入り混じった気持ちにさせてくれる本でした。
日常に疲れたら時々この本を開いて、意図的に迷子になりたい。そう思いました。そうすればいつか自分も、猫町にたどり着けるかもしれないから。
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