『人形館の殺人』綾辻行人

ミステリ・ホラー

綾辻行人の館シリーズ第4弾。『人形館の殺人』は、京都の古い邸宅で起こる殺人事件を描いたミステリで、人形(マネキン)が作品のモチーフになっています。

シリーズの中でも異色として語られることの多い作品です。

著:綾辻行人
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『人形館の殺人』あらすじ

父親が遺した屋敷を相続した飛龍想一は、育ての母とともに京都にある緑風荘へ移住する。その古い屋敷は日本家屋部分を母屋に、洋館部分をアパートして使用している。

特筆すべきは彫刻家であった父親が遺した「人形」で、屋敷のあちこちに配置されているのだった。

その後、屋敷では想一を襲う不可解な事件が続く。想一は偶然再会した幼なじみである架場に相談するが…。想一の過去と連続殺人、不可解なメッセージ。これらは何を意味するのか。

意外な犯人と意外な展開

館シリーズはいつも意外な犯人と展開に驚かされます。しかし『人形館の殺人』他のシリーズとは違う驚きがありました。なにせ、探偵役の島田潔がほとんど登場しません。

最後に少し「登場」しますが、ほとんど語り手である飛龍想一からの視点で描かれます。

関連の無さそうにみえる事件や記憶が徐々に結びつき、やがて真相へとつながっていきます。その記憶のあいまいさ、不確かな感じに、読んでいるこちらも落ち着かない気持ちになりました。

以前読んだ『野呂邦暢ミステリ集成』の短編にも、描かれた絵が主人公の深層心理を呼び起こす話がありました。

今の自分で忘れていても、もうひとりの自分は大事な記憶を持ち続けている。その隔たりが人を意外な行動に起こさせるのかもしれません。

異色作ではあるのだけれど、その異色部分が大変おもしろい作品でした。また、作中に島田荘司さんの『占星術殺人事件』が取り上げられていて、作者の遊び心におもわずニヤリとしてしまいました。

綾辻行人作品感想

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