アパートの管理人になった女性と、個性豊かな住人たちの、少し不思議な交流を描いた『花桃実桃』。
『花桃実桃』あらすじ
会社をリストラされたアラフフォー独身女の茜。彼女は、父親から相続したアパート「花桃館」に移り住み、管理人としての生活をスタートさせた。
しかし、住人は父の元カノの老婦人、家賃滞納のウクレレ弾き、生活能力の乏しいヘタレ親父、整形マニアの女性など、一癖も二癖もある連中ばかり。
おまけに時々、死んだはずの住人も現れるようで…。父の元カノ・李華さんによると、茜の父親もそういったものが見えていて、そうした人たちともに接していたらしい。
個性的な住人たちに振り回されたり、住人の中学生からのプロポーズ(?)にあたふたしたり、ストレスで脱毛症になって悩んだり。
そんな慌ただしい生活に慣れた頃、突然同級生の尾木くんから交際を申し込まれ…。
茜は、住人(?)の幽霊とも自然に話せるため、不思議な出来事に巻き込まれます。
しかし、生身の住人たちの方が変わっていて、めんどくさい人たちなんですよ。だから、返って幽霊たちとの付き合いの方が自然な感じです。
不思議だけれども現実的
「花桃実桃」は不思議な話なのに、とても現実的なお話でした。現実の話なのに不思議な匂いのする「エルニーニョ」とは真逆でした。その不思議と現実が混ざる感じが心地良いんです。
それはひとえに主人公の茜が40代の女性らしい悩みや問題にぶちあたったり、その中から自分なりの答えらしきものを探しだしていくところがリアルなんですね。
それにしても中島作品にでてくる男性はヘタレが多い!
生活能力ゼロで、女房に逃げられて長男におんぶにだっこな父親や、家賃を払わないウクレレ弾きの若者とか。
同級生の尾木くんも、どっちつかずな感じだしなあ。
やはり魅力的だったのは、茜の父親の元カノ・李華さんですね。
強気なのに人見知りで、父親のことを一途に思っていて。
お盆にはきっと「花桃館」に戻ってくると信じていたり、父親を見かけたとおもって走ったり。一途に思っている姿がかわいらしい。こんな風に年をとれたらいいなあ。