『銀の枝』は『第九軍団のワシ』の主人公マーカスの子孫たちが活躍する物語です。冒険譚好きな人におすすめ。

『銀の枝』あらすじ
ローマ帝国後期。外科医のジャスティンはローマからブリテンへ派遣される。そこで彼は百人隊長フラビウスと出会い、彼が同じイルカの紋章を持つ親族であることがわかり、親友となる。
ジャスティンとフラビウスは、当時ブリテンを支配していた皇帝・カロウシウスに目をかけられていた。
しかし、ある日、狩りに行った島で「海のオオカミ」と呼ばれるブリテンの男と、アレクトス大臣の密談を聞いてしまう。
皇帝に進言するものの、皇帝は受け入れず、反対に彼らは北の赴任地へ追いやられてしまう。やがて2人は、皇帝がアレクトスに暗殺されたことを知る。
アレクトスに反旗を翻すため、彼らは行動を開始する。
信頼する仲間を失い、長い苦難の末、家の祭壇の下から軍団の旗印である「ワシ」を発見し、寄せ集めの軍団の旗印とするのだった…。
史実とフィクションの融合
サトクリフは、発掘されたローマの遺物から、歴史を絡めた壮大な物語を作りだしてくれます。
サトクリフは遺跡に刻まれた「槍の人 エビカトス」という文字から着想を得ました。そこから、部族を追われながらも、部族のために戦う孤高の狩人を描いたのです。
旗印となる「ワシ」も、どうして実際に発掘された場所に埋められたのか。その歴史を物語の。中に落とし込んでいます。
それがもう、本当かっこよくて。まるで歴史が、その場で作られていくのを見ているようでした。
また、敵から追われた2人がそこから仲間を集めて、よせあつめの軍団を形成していき、最後に先祖のマーカスに導かれるように「ワシ」を反撃の旗印していくところも痛快でした。
逆境から立ち上がり、寄せ集めの軍団をつくる展開は『十二国記』でもありましたが、やはり胸が躍る展開です。
ただ、エビカトスの名前が史跡にどう残っていったのか、そのあたりも描いてほしかったかな。