BAR追分シリーズの続編『情熱のナポリタン―BAR追分』。新宿三丁目にある「ねこみち横丁商店街」。
その路地の一番奥にあるのが「BAR追分」。昼間は、ご飯の「バール」夜は本格的な「バー」。
ふたつの顔をもつBAR追分に集まる、人々の物語。
お好み焼き大戦
脚本家志望の宇藤くんの脚本完成祝いと称して、追分メンバーが集まっての飲み会。
そこで、パンケーキやホットケーキ、お好み焼きなど、「粉もん」論争が繰り広げられる。
それに加わったお客さんの浜松のお好み焼きの味から、祖父の思い出につながっていき…。
食べ物の思い出は、それをつくってくれた人への思い出でもあるんですね。浜松ではお好み焼きにたくあんを入れることもあるのだとか。
「食」って土地土地によって変わるんだなあ。
秋の親子丼
Bar追分のバーテンダー見習いの純は、人気の元劇団員。怪我で役者を辞めた彼の元に、劇団の主宰・桜井ギシュウが訪ねてくる。
ギシュウは純を待つ間、宇藤の脚本をこき下ろしたかと思えば、劇団にスカウトしたりと、とにかく強引。
モモちゃんに怒られて退散するも、全く悪びれない。困ったものです。
しかし、この話のメインは宇藤くんじゃなくて、兄弟お客さんです。
両親の離婚で別々に暮らしていた兄弟が、久々に再会しお互いの距離を縮めていく。しみじみとしたいい話なんです。
蜜柑のこども
前回、劇団主宰のギシュウに脚本をけなされて落ち込む宇藤くん。そんな時、遠藤会長が知り合いの子・柊くんをバールにつれてくる。
シングルマザーの母親が入院する間、預かることになったらしい。なりゆきでを柊くん預かることになった宇藤くんとモモちゃん。
最初は人見知りで、ご飯を食べたがらない柊くんも、モモちゃんの工夫した料理や宇藤くんが遊んでくれたたおかげで、すっかり2人になついてしまい…。
モモちゃんの作る焼きそばパンケーキが美味しそう…!
やがてお母さんが退院、柊くんは母親の故郷、新潟に帰ることに。人見知りな柊くんが「うどうくん」て呼ぶのがかわいい。
最後に大好きなメロンパンを宇藤くんに渡すシーンは、作中にでてくる芥川龍之介の「蜜柑」のシーンにかけているんですね。
BAR追分の人々との出会いは、柊くんとお母さんにも最後の東京のいい思い出になったんじゃないかな。
情熱のナポリタン
宇藤くんや純くんにやたらとちょっかいを出してくるギシュウさん。宇藤くんの脚本をけなしても、才能は買っていて、あわよくば純もまとめて手元に置きたいらしい。
そんな天才、ギシュウさんもメディアミックスの一大企画に頭を悩ませていた。ギシュウの腹心・空開は、なんとか宇藤を説得しようと画策をはじめ…。
宇藤くんとももちゃんも、ねこみち横丁のみんなに愛されているのだけど、「いつまでもここにはいられない」って思っているようです。
彼らがねこみち横丁を卒業するときが、この物語が終わるときなんじゃないかと。
『BAR追分』はそんな予感があって、それは彼ら成長がうれしい反面、切ないことだと思うのです。