日常と非日常が入り交じる、南国への逃避行『エルニーニョ』中島 京子

エルニーニョ 不思議
エルニーニョ

エルニーニョ』はDV彼氏から逃げる女性が、不思議な少年と出会い旅をする物語。直木賞を受賞した中島京子さんの『小さいおうち』後、初の書き下ろし小説です。

日常と非日常が入り交じる描写が魅力的です。

著:中島京子
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「エルニーニョ」あらすじ

恋人ニシムラのDVに悩まされていた小森瑛は、ある日ニシムラの金を盗みだして逃亡。誰ひとり知り合いのいない南へ逃れた瑛は、そこで褐色の肌をした不思議な少年ニノと出会う。

ニノが居候していた古い商店街の石松砂糖販売で、しばらくやっかいになっていた瑛。

しかし、砂糖販売店が評判になったことでニノを追う「灰色」が追ってきてしまう。そしてまた二人はあてのない旅に出ることに。灰色はニノを外国へ連れて行くつもりらしい。

旅先で様々な人々と出会い、楽しいこともあったけれど、やがて「灰色」だけでなくニシムラまでも瑛とニノを追ってきてしまい…

日常と非日常が入り交じる、南国への逃避行

南国の明るい日差しの中、先行きの不安や、追っ手に怯えながらも旅をする場面がすごく印象的でした。

瑛やニノが不安を抱えながら旅をする感じがすごく伝わってきて、「ああ、逃亡するってこんな感じなのだな」と思いました。

また、瑛とニノの逃亡劇の合間に、その土地の伝承や言い伝えが印象的に配置されています。

瑛のように小さな男の子をつれて写真に写ったからゆきさん。

日本に残る息子のために高級砂糖を残したオランダ商人。

石松砂糖販売の地元に伝わる小守地蔵の話。

どれも印象的で不思議な話で、それらは少しずつ現代の瑛とニノにも関係するようになっています。この不思議な話たちとのリンクが好きでした。中島京子さんは日常の中に非日常を混ざり合わせるのがうまいんですよね。

読みおわった後、じわじわと染みこんでいくような、印象的なお話でした。そして、旅にでたくなりました。

ダメ男たちと少年

だた、苦手だったところもあります。私はニシムラが瑛に暴力をふるうシーンは正直つらかったです。

そして「エルニーニョ」に登場する男達は、みんなみんな、しょうもない。

DV男ニシムラを筆頭に、浮気をしても母に謝罪しない瑛の父、ニノを無理やり連れ戻そうとする「灰色」。

彼らは瑛とニノの気持ちを無視して事を運ぼうとします。でもその中で唯一、まだ少年のニノだけがかっこいい「男」でした。

小さな体で瑛をニシムラから守ろうとするのです。きっとこの子は将来、いい男になるでしょうね。

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