『くうねるところすむところ』は、工務店を舞台に、建設業界で働く女性たちの挫折と成長を描いたお仕事小説です。
『くうねるところすむところ』あらすじ
転職雑誌の副編集長である梨央は、やりがいのない仕事と出口の見えない不倫(編集長と)に嫌気がさし、酒に酔った勢いで開いていた工事現場の足場をのぼってしまう。
降りられなくなってしまった梨央を助けてくれたのは、とび職の田所だった。田所に恋をし、最初は彼に近づくために仕事のことを聞きだす梨央だったが、しだいに田所の語る建築現場の魅力に魅かれ、建設の世界に飛び込んでいく。
もう一人の主人公・姫(社長の娘だから)こと郷子は、離婚をきっかけに、父親の会社「鍵山工務店」を継ぐことになってしまう。
最初は会社をたたんでしまう腹積もりだったが、古参の社員たちに「信用があるからすぐにはやめられない」と諭され、素人社長として資金繰りや謝罪に駆け回る日々。
銀行からの助言(脅し)でリストラを敢行するものの、やめた社員ができる社員を引き抜いたため、現場が回らなくなってしまう。
そこで姫社長は、建築の世界に飛び込んだばかりの新入社員・梨央を現場監督に任命する。
建設業界でがんばる女性たち
男尊女卑の気風が残る建設業界で、2人の女性が活躍するところが痛快でした。2人とも最初の動機は不純(梨央は恋、姫はいやいや)でしたが、悪戦苦闘しながら建築の世界の魅力にはまっていきます。
姫は最後の方までうだうだしていましたが、それでも気づくところはあったようで、合併や廃業の誘いを乗り越えて建築の世界で真面目にやっていく決意をします。
それにしても、施主というのは突拍子もないわがままを言い出すものだというのを初めて知りました。
依頼主というのはどの業界でもやっかいですが、「自分の家」を建てるというのは格別で、人生を担っている一大行事だからこそあれこれと口を出したくなるのでしょうね。
それに応えてくれる建設業界の人たちってすごい。
物語に出てくる職人さんたちは建物をいきもののようにやさしく、丁寧にあつかうんです。
そして建てた家は自分の家のように愛着があるのだと。
手抜き工事をする業者はきっと建物を愛していないのでしょうね。