美術版プロジェクトX『美しき愚かものたちのタブロー』原田マハ

松方コレクション アート・ものづくり

美しき愚かものたちのタブロー』は、日本に西洋美術館をつくろうとした男と、その志を継いだ男たちの物語。

取り返そうじゃないか、あのコレクションをーこの国に。

このセリフを読んだ時、涙が溢れました。

著:原田 マハ
¥880 (2026/03/11 00:47時点 | Amazon調べ)

『美しき愚かものたちのタブロー』あらすじ

戦前、実業家・松方幸次郎が西洋美術館建設のために購入した3,000点にも及ぶ西洋美術。

「松方コレクション」と呼ばれたこれらの美術品、そのほとんどが焼失や散逸で失われてしまった。

その後、わずかに残った数百点の作品も「敗戦国の財産として」フランス政府が没収すると通達される。

それを聞いた当時の首相・吉田茂はコレクションの返還交渉のため、外交官美術関係者をフランスへ送る。

その中には、かつて松方コレクション収集のブレーンをつとめた美術史家、田代雄一がいた。

田代はかつて、松方幸次郎と印象派の巨匠・クロード・モネのアトリエをたずねていた。そして、そこで描かれた「睡蓮・柳の反映」を目にしていたのだ。

しかし、フランス側は「睡蓮」をはじめ、ゴッホの「アルルの寝室」、ルノアールの「アルジェリア風のパリの女たち」コレクションの中枢をなす名画の返還を頑なに認めなかった。

タブローに魅せられた愚か者たち

敗戦国という負け組が、巨大権力を持つ戦勝国相手に困難な交渉をおこなう。

と聞くと、池井戸潤風のの逆転劇を想像します。でもさすがは原田マハさんが伝えたいのは、重きを置くのは「ビジネス」ではなく「タブロー」なんです。

あるいは人々のタブローへの情熱と言い換えてもいい。

「わしは絵のことはわからん」と生涯言いながらも、「絵でなく人を見て買う」と言われた松方。彼は自分の信頼する人物の意見と、自らの直感で名作を探り当てていきます。

特に、印象派の巨匠、クロード・モネの絵に感銘を受けたシーンの言葉が彼の人柄が現れています。

私は絵のなんたるかを知りません。何もわからない。お恥ずかしい話です。けれど、私は…なんというか、先生の作品が好きです。

この言葉は、気に入った絵は売らないことで有名だった、モネの心を動かしました。

松方のタブローへの情熱は、周囲の人々にも受け継がれていきます。

彼の役に立ちたいとタブローの返還に尽力する美術史家の田代。戦争中、フランスにとどまり絵を疎開させた松方の部下の日置。

後半、日置がコレクションを守るため、フランスで苦闘する様子が切々と描かれています。

絵を描いた者、その絵を後世のために購入した者、そしてそれを守り抜いた者。

そんな愚か者たちがバトンのようにタブローを伝えてくれた。だから私達は今、絵を「普通に」見ることができるのです。

艦隊ではなく、美術館を。戦争ではなく、平和を。

このセリフ、特に印象に残りました。

松方コレクション展(2019年:国立西洋美術館)

返還されなかったゴッホの「アルルの寝室」などを展示。コレクションに関する歴史資料も展示されていました。AIによって修復された「睡蓮」も展示も。

松方コレクション展の様子はこちら

松方コレクション

修復前の「睡蓮」は腐食がすすんでほとんど原型をとどめていませんでした。そこにAI技術を活用して絵を復元。

ここにもまた、タブローに情熱をもやす現代の愚か者たちがいました。

原田マハ アート小説

タイトルとURLをコピーしました