『板上に咲く』原田マハ

板上に咲く アート・ものづくり
板上に咲く

情熱の版画家・棟方志功の妻もまた、情熱の人でした。原田マハさんの『板上に咲く』は、彼を支えた妻・チヤの目線から見た棟方志功とその作品の物語です。

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妻から見た棟方志功

物語はチヤさんが棟方志功と出会ってから添い遂げるまで、夫婦の人生の節目となった出来事が描かれています。

驚くことに、棟方はなんと新聞広告でチヤさんに愛の告白をしているのです。さすが情熱の人だ…。

やがて結婚した二人ですが、最初は東京と青森で別れて暮らすことになります。

棟方は「帝展に入選して一人前になるまでは暮らせない」など弱気な手紙ばかり。一向に東京にチヤを呼び寄せてくれません。

業を煮やしたチヤさんはとうとう、実力行使に打って出ます。内緒で棟方の居候先に乗り込むのですが、情熱家の妻もやはり情熱家なんですねえ。

プロデューサー・柳宗悦との出会い

家族いっしょに暮らせるようになったものの、生活は困窮。野草をおかずにする日々の中、精力的に制作を行う棟方に転機が訪れます。

民藝運動の主催者・柳宗悦は、彼が提唱している民藝のテーマである「無心の、自然の、健康の美」を棟方の版画に見出し、支援を申し出ます。

柳宗悦は今で言うプロデューサーのような人。棟方に課題を与えたり、勉強させたりして「世界のムナカタ」に育てていくのです。

それは才能はもちろんですが、棟方の持っている運の強さと、愛される性格によるものだとチヤさんは考えます。

青森時代から多くの支援者が彼を助けていますし、柳宗悦や仲間たちも支援を惜しみませんでした。柳や濱田庄司は棟方を「熊の子」と呼んでいました。愛されキャラにぴったりのあだ名です。

棟方志功展のポスター。こんな笑顔をされたら、みんな好きになっちゃいますね。

棟方志功展
棟方志功展

ゴッホとひまわり

チヤさんは、自らを棟方志功という太陽を追いかけるひまわりに例えて夫を支えていきます。

その行動力は凄まじく、疎開先から東京の自宅へ戻り、一人で版木を守ろうとします。奮闘するのですが、結局ほとんどの版木は空襲で失われてしまいます。

責任を感じ、離縁まで考えるチヤさんに、棟方志功が取った行動が本当にすてきで…。夫婦の絆に感動しました。

やっぱり棟方志功という情熱の芸術家に添い遂げられるのは、情熱を内に秘めたチヤさんだからこそなのでしょうね。

あわせて読みたいアート小説・随筆

板極道…棟方志功の随筆。柳宗悦との出会いや、ゴッホの絵を見たときの感激について書かれています。棟方志功の人間味と情熱が感じられる一冊です。

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リーチ先生…イギリス人陶芸家・バーナード・リーチの半生を、彼の弟子の視点から描いた原田マハさんのアート小説。柳宗悦も登場します。

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