『一次元の挿し木』は、令和の『孤島の鬼』なのではないだろうか。
200年前の骨と、行方不明の義理の妹のDNAが一致するという不可解な出来事。
そこから恩師の死、謎の暗殺者、宗教団体などが絡み合う展開に、ページをめくる手が止まらなくなりました。
この表紙絵がまた、物語を的確にあらわしています。
『一次元の挿し木』あらすじ
遺伝人類学を学ぶ七瀬悠は、200年前、ループクンド湖で死んだ骨のDNA解析を恩師の石見崎教授から頼まれる。その結果は、義理の妹・紫陽と全く同じだった。
その後、石見崎が殺され、紫陽の行方と謎を追う悠の前に、日本を牛耳る宗教団体『樹木の会』と義父、七瀬京一が立ちふさがる。
さらに、謎の暗殺者「牛尾」により、関係者が次々と殺されていく。
石見崎の姪・唯とともに謎を追う悠。そこに見たのは…。
伏線回収
正直、途中で紫陽の正体や、悠の母の役割については推測できたんです。でも物語の力がすごくて、グイグイと引き込まれていきました。
伏線回収もすごくいい。例えば紫陽の「賢い人の言葉を使えば、賢くみえる」というセリフ。これをなぜ、恩師の姪である唯が知っていたのか、とか。
紫陽が「何もない」と言った場所に後半、驚きの展開があったりとか、登場する映画も伏線が隠されている。
読み終わった後、もう一度読みたくなりますね、これは…。
令和版『孤島の鬼』
この本を読んだ時、私は、江戸川乱歩の『孤島の鬼』を思い出しました。
内容はまったく違うのだけど。二作品に共通するのは、自ら神となり、人を創造したいという欲求を持つ者たちと、そこに抗う者たちの物語です。
暗闇に潜む異形、主人公に影響を与える二人の女性。そして、読み進めるごとに謎が少しずつ剥がれていく興奮。
まさに『一次元の挿し木』は、現代の科学技術に裏付けされた、令和の『孤島の鬼』なのかもしれない。
現代ではクローン技術で生物のコピーは可能になりましたが、それを阻むのが「倫理」と「宗教」なんですが、ここではそこを逆手にとって…。
これ以上はネタバレになるので詳しくは言えません。
ぜひ、読んでみてください。

