『月の影 影の海 下』、さあ、ここからは前半からの伏線回収。人に裏切られ、妖魔に襲われ、心身ともに傷ついた陽子の前に、一匹のねずみが現れ…。
ようやく地獄を抜け出した陽子の放浪が幕をおろします。
※再読のため、多分にネタバレを含みます
『月の影 影の海 下』あらすじ
妖魔に襲われ、瀕死の重傷でを負った陽子を助けてくれたのは、「楽俊」というねずみの半獣だった。
楽俊は陽子にこの世界の情報を伝え、海客を保護している雁国へ行くことを勧め、自分も付いていくという。
これまで騙され続けてきた陽子は、楽俊を疑いながら共に旅をすることに。その途中、妖魔に襲われ、怪我を追った楽俊。
陽子は身元がバレるのを恐れ、そこから逃げ出してしまい…。
地蔵菩薩のような楽俊
『月の影 影の海 上』を読み返した時、「陽子の地獄のような体験は仏教修行のようだ」と書きました。
そして、地獄には亡者を救う地蔵菩薩が現れます。
楽俊はまさに陽子にとって地蔵菩薩のようでした。人に騙され、猿に翻弄され、妖魔に襲われ、心も体も瀕死の重傷をおった陽子を無償の愛で助けるんです。
ただ、それは楽俊自身の都合もあるのですが。(半獣としてのコンプレックスや就学へのチャンスなど)
それでもお尋ね者の陽子を助けることは、かなり勇気のいることだと思いいます。でもそれを、「自分の問題だ」と楽俊は言います。
おいらは陽子に信じてもらいたかった。だから信じてもらえりゃ嬉しいし、信じてもらえなかったら寂しい。それはおいらの問題。
彼は、自分の行動に責任をもち、それを他人に押し付けようとしないんです。
これ、なかなかできることじゃない。(できるとしたら『鬼滅の刃』の竈門炭治郎くらいじゃないでしょうか。)
世界の謎解き(ネタバレ)
『魔性の子』では、祟ると言われた高里要が、徐々に自らの本性(麒麟)と居場所を思い出してゆく、ミステリ仕立てのホラーでした。
『月の影 影の海』でも、これまで謎だった陽子の正体が徐々に明かされていきます。
- なぜ、陽子が言葉がしゃべれたのか
- なぜ、傷がすぐに治るのか。
- なぜ、ケイキはこちらに陽子をつれてきたのか。
それは、陽子は景の王として景麒に選ばれた存在だったから。胎果の王を妬んだ隣国・巧の王によって景麒が捉えられてしまったから。
徐々に目の前の扉が開かれていく感じ。上巻が悲惨だった分、高揚感がすごかった。
でも、それにしても景麒がもっと情報を伝えてくれていたら、陽子はあんな悲惨な目に合わずにすんだんですよ。
そして冗祐も、もっと早く主命に背いて陽子と会話をしていたら、こんなことにはならなかったのになあ。
でもそれは、陽子が王として生まれ変わるのための「通過儀礼」だったのかもしれませんが。
Audible版『月の影影の海 下』
Audible版、物語への没入感がすごい。キャラクターの個性に合わせて演じ分けられています。
ねずみの楽俊と青年楽俊とでは声が違うし、景麒の声はちょっとトゲがあってぴったり。

