『雪華邸美術館の魔女』は双子の姉妹が「いわくつき」の美術品にまつわる事件を解決するミステリ。
生き別れの双子、豪華な邸宅、美味しいお菓子にきれいなワンピース…。設定は『少女の友』のようなのに、中身は決して甘くない。人間関係が複雑に絡み合ったミステリでもあるのです。
表紙絵は『マガジンロンド』のマツオヒロミさん。
『雪華邸美術館の魔女』あらすじ
一方は華族令嬢として、もう一方は孤児として別々に育った撫子と小百合。小百合は16歳の時、雪宮家へ引き取られる。
そこには祖父が残した美術品を集めた雪華邸美術館があった。そして、美術館を訪れる人々は「いわくつき」の美術品を求めてやってくるのだった。
時代の雰囲気が感じられる描写
白川紺子先生は、時代の雰囲気を描くのがうまい。その時代に入ったような気持ちで読むことができるから。
『花菱夫妻の退魔帖』では大正時代の華族文化や庶民の生活が、『雪華邸美術館の魔女』では昭和30年代の活気と闇、豪華さと貧しさが対比的に描かれています。
撫子と小百合のカラフルなワンピースにレースの衿。光子さんのひまわり柄のワンピースなど、当時のファッションは読んでいるだけでその姿が浮かぶんです。
サンドイッチにクッキー、レモンケーキ…。登場するお菓子も、中原淳一の雑誌のような華やかさです。昭和レトロが好きな私がたまらなく好きな描写でした。
「少女小説」では描かれない闇
生き別れの双子や豪奢なお屋敷、そして美術館の秘密の部屋。そんな「少女小説」のようなモチーフを使いつつも、通常の少女小説にはない闇の部分も描いています。
この小説で感じたのは、戦後、大人が子どもを搾取する悲惨さでした。小百合は幼い頃にさらわれ、「母」と死に別れ、親戚たちをたらい回しにされ、養育院で育ちます。
執事の橘も戦災孤児として大人から虐げられて育ちました。
小百合は『秘密の花園』のように裕福な実家に引き取られますが、物質的に恵まれても周囲の静かな差別や偏見に心を痛めます。
また、元華族令嬢として何不自由なく育った撫子も、財産を狙う親戚たちから家を守るため一人で戦ってきたのです。
大人たちの翻弄され続けた二人が出会い、大人たちに立ち向かっていく様子に胸が踊りました。今後、二人が今後、どのようにの絆を深め、事件を解決してゆくか楽しみです。
マツオヒロミさんによる美麗イラスト
表紙絵を描かれたマツオヒロミさん。実は、架空のファッション誌『マガジンロンド』では時代別のファッションやデザインを手掛けています。
時代ごとのファッションの再現率の高さと、それを御自分のデザインに落とし込む表現力がものすごい。
表紙絵も昭和30年代のファッションを表現しつつ、撫子と小百合の個性がよく現れています。
推し作家と推しイラストレーターのコラボ。ああ、読んで良かった…。

