『くらのかみ』は夏になると読み返したくなる本です。
名作『十二国記』『ゴーストハント』の作者・小野不由美さんが描く子供向けの、けれど本格的なホラーミステリ。
古い田舎の家、みんなと遊ぶ夏休みのワクワク感、夏が終わる切なさ。
そんな夏の描写と怪奇絶妙に混じり合って、不思議な夏休みの事件となっています。
『くらのかみ』あらすじ
耕介は、夏休みに父と一緒に田舎の大叔父の家を訪れた。この家は資産家だが子供が育たないため、子供のいる親戚を呼んで、あと継ぎを決めることになっていた。
大人たちが話し合いをしている中、退屈した子供たちは蔵座敷で「四人ゲーム」を始める。
真っ暗な部屋の四隅に4人ずつ座り、1人ずつ移動して隅にいる子の肩をたたく。これを順番に繰り返すと、いつの間にか1人増えているという。
そうして明かりをつけた時、4人のはずの座敷には子供が5人いた。
どうやらこの家の守り神「お蔵さま」と呼ばれる座敷わらしが混じってしまったらしい。でもみんな、どの子が座敷わらしかわからない。
一方、座敷わらし騒動の直後、大人たちが食事の後で苦しみだした。料理に毒のある山菜「ドクゼリ」が混ざっていた。
その後も沼に人魂がでたり、井戸が鳴るなどの怪異が起こる。犯人を突き止めようと耕介、梨香、真由、音弥、禅、光太の6人の子供たちは捜査を開始するが…。
大人も子供も楽しめる、ホラーミステリ
幽霊や妖怪、家にかかる行者の呪い、一見、たたりのような事故が発生します。でも、事件にはちゃんとした犯人がいて、それを子どもたちが突き止めていく物語です。
ホラー要素を含んだ上で、ミステリとしてのロジックもきっちりしています。特に座敷わらしの正体と、ドクゼリ混入の犯人は、巧妙にリンクしているのです。
物語の最後、いよいよ座敷わらしの正体がわかります。特に怖い描写が書かれているわけではないのに、座敷わらしが去っていくシーンは、読んでいて背筋がぞわりとしました。
もともと「くらのかみ」は有名作家陣が児童~ティーンむけに執筆した「ミステリーランド」シリーズの1冊として書かれました。」
子供たちには本格的な推理が楽しめ、大人たちは、懐かしい子供のころを思いだせるシリーズです。