『東京ロンダリング』、面白いテーマの小説でした。
過去に賃貸物件で事件が起こった場合、客に提示する義務がありますが、しかしその後、一度でも人が住んでしまえば、伝える必要がなくなる。
そのため、「ワケあり物件に住む仕事(ロンダリング)」がある、らしい。
本当かどうかはわかりません。でももし、そんな仕事をしている人がいたら、どんな暮らしをしているのでしょうか。
そんな社会の片隅に生きる人にスポットを当てた作品です。
東京ロンダリング あらすじ
主人公・りさ子は、行き場を失い、いわくつき物件に住む「ロンダリング」の仕事をはじめる。
家を追い出されたりさこは、不動産屋の相葉にすすめられ1年間、ロンダリングの仕事を続けてきた。
「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。」
りさこは、相葉からいわれた言葉に従い、淡々と気力のない生活を続ける。
その後、ロンダリング先の下町のアパートである変化が訪れる。大家の眞鍋夫人に強引に説得され、定食屋「富士屋」を手伝うことに。
富士屋の息子・亮や周りの人達と「関わり」がうまれる。亮はりさ子に「ずっとここにいてほしい。」と告げるが、りさこはまた、そこを立ち去らなければならない。
そんな折、仲間の菅が失踪。りさ子は急遽・菅の代役でロンダリングをしなければならなくなった。亮や眞鍋夫人に別れもいえないまま…。
ロンダリングの果てに
このままりさ子はまた、鬱屈をかかえながらロンダリングを続けていくのかな、それではあまりにも救いがないな…。
と思っていたら、亮たちとの出会いや事件をきっかけにして、りさこの中に変化が起ていきます。最後の展開は爽快感がありました。
今自分がいる場所でなにができるのか考え、前向きに進んでゆくことができたのです。
実際にロンダリングという職業があるかはわかりませんが、寄る辺のない人達が、都市のかたすみで寄生しながらいきていく生活は、先行きの不安を感じさせる反面、どこか自由な気がします。
変死があった部屋に住むのはできそうもありませんが、知らない街で少しの間過ごし、また去っていく。そんな生活に少し憧れを感じました。