『迷路館の殺人』は、館シリーズ第三段。作中作の形式をとりながら、迷路仕立ての館で起こる殺人事件が描かれます。
幾重にも張り巡らされたトリックに、ページをめくる手が止まりませんでした。

『迷路館の殺人』あらすじ
迷路館は天才建築家、中村青司が手掛けた館。その主である宮垣葉太郎は著名なミステリ作家。
その館に招かれた編集者夫婦、ミステリ評論家、弟子である作家数名。
そして、ミステリ好きが高じて老作家と親しくなったという島田潔。
全員が集まると、秘書から老作家の自殺が伝えられる。残された遺言には弟子の作家たちが館を舞台にした小説を書き、選ばれたものに遺産が与えられると書かれていた。
作家たちはそれぞれの事情から競作に参加するが、次々に自分の小説に見立てて殺害される。さらに館に閉じ込められた人々は疑心暗鬼になりながらも島田を中心に犯人を突き止めようとするが…。
この事件をモチーフに書かれた『迷路館の殺人』が島田の元に送られてくる。小説を読んだ島田は作者、鹿谷門実を呼び出し、真相を語らせる。
読み終わった後さらなる衝撃
いわゆる「作中作」ですが、そこは普通と違っていて、小説の中にちゃんと『作中作:迷路館の殺人』のタイトルや奥付がついた、凝ったつくりになっています。
出版元は「稀譚社」という架空の出版社。実は京極作品や辻村深月作品にも同じ名前が登場するのですが、なんらかの共通認識があるのでしょうか。
そして作中作を読み終わって、事件は解決したかに思えたのですが、実はまったく違う真相が隠れていたという…。
二重三重の仕掛けに翻弄され、まさに迷路館の客人になったような錯覚に陥ってしまいます。
迷路館の仕掛け
「迷路館」は、中村青司が作った建物なので当然、隠し部屋や隠し通路が存在します。
その「隠し」部分がトリックと関わるので詳しくは言えませんが、迷路廊下に掛けられた仮面や彫像など、館の装飾もまたトリックに大きく影響を及ぼします。
特にあの、最後の隠し部屋のトリック…。いや、ネタバレはやめておきましょう。
気になる方はぜひ、『迷路館の殺人』を読んでみてください。