『英国メイド マーガレットの回想』は1920年代の女性マーガレットのメイド時代の体験を綴ったもの。
当時の労働階級への差別や辛い労働が描かれていて、古きよき英国に憧れる人にとっては少し厳しい内容かもしれません。
けれど、劣悪な環境の中でも、キャリアを積みながら努力を重ねていったマーガレットの姿は読み応えがありました。

『エマ』との違い
森薫さんの漫画『エマ』は、マーガレットの時代から約30年前のお話です。美しく教養高いメイド・エマと、紳士階級の長男ウィリアムとの恋愛が描かれます。
マーガレットの回想を読むと、『エマ』がいかに非現実的かが伝わります。
昔から紳士階級とメイドの結婚はあったようですが、そんなのはおそらくレアケース。
マーガレットの時代でもメイドは階上(雇い主)たちから、対等の人として扱われることありません。劣悪な労働、環境で働いています。
メイドという職業は憧れるほどラクじゃないってことですね…。
マーガレットのメイド人生
マーガレットの働いていた上流階級の家でも、メイドを単に「労働力」としてしか考えていません。
(上流といっても、それほど金持ちでも位も高くないのに)
両者の間には埋められない格差への差別が存在します。
ある時、女主人に新聞を手渡そうとした時「銀のトレーに置いて渡してちょうだい」と言われます。まるで汚いものを見るように。
けれどそんな辛い経験が、マーガレットを強く、したたかにしていきます。
キッチンメイド(コックの下で働くメイド)の経験しかないのに、コックとして働いたり、まったく作ったことのない料理をつくって失敗したりします。
それでも経験を積んで最終的にはフルコースまでつくれる料理人に成長していきます。
1920年代・英国労働階級の婚活事情
紳士的なイメージのあるイギリス。しかし、その裏では上流階級のスキャンダルは日常茶飯事。
メイドの中には主人や主人の親戚などと関係をもってしまい、捨てられて未婚の母になるといった悲劇も。
マーガレットは、そんな同僚の姿を見て「ちゃんとした結婚相手を見つけて退職してやる!」
と心に決めます。
結婚相手を見つけるべく、ダンスホールなどで相手を探すマーガレット。
今も昔も、婚活女子は大変です。外出は雇い主の決めたルールに従わなければならない。それに当時はまだメイドに対する偏見もありました。
マーガレットは自分の職業を隠して男性とデートをします。
日本語訳を担当したのは村上リコさん。『エマ』の森薫さんと組んで、メイド関連の専門書を手がけてます。その他にもヴィクトリア時代の著作も多数。